Re:Re:Re:Re:Re:あのさ | ナノ






 From 泉くん
 Title 連絡
 
『明日の部活、モモカンの都合で昼までだってさ。』




 From 三橋
 Title Re:連絡

『わかった。
 ありがとう。』




*********




ぶーん、と机の上でマナーモードに設定したままの携帯が音をたてて震え、ちらりと泉は表示を確認した。


(三橋だ)


少し驚き、直ぐ様ぱくんと携帯を開く。たった二行の、簡潔な了承の言葉にすら、自分の頬がやわらかく緩むのを感じた。

返事が来るとは思っていなかったのだ。メールの文面を考えるのに人一倍時間がかかる三橋のことだし、尚且つ時刻は11時を回っている。眠い目をこすりながら、頑張ってボタンを押す三橋を想像した。
ふわふわと揺れる後ろ姿。小さな携帯を支える、大きな手のひら。桜色の爪先。



ぱくん、と携帯を閉じて、


(…………)


少し考えてから、泉は再び携帯を開く。




*********




 From 泉くん
 Title あのさ

『今、何してた?』 




*********




風呂上がりのまだ濡れた頭をタオルでわしゃわしゃと拭いつつ、三橋はベッドにぼすんと飛びこんだ。項に触れる毛先が、ぴたぴたと冷たい。


「ふぃー」


思わず気の抜けた声が漏れる。
と、
不意に枕元で充電中の携帯がぶるぶると震え、三橋は慌てて身を起こした。


(泉くんから、返事だ)


頬が、急に熱をもったような気がした。





*********




 From 三橋
 Title Re:あのさ

『お風呂から出て、のんびりしてたとこ。
 泉くんは?』





 From 泉くん
 Title Re:Re:あのさ

『俺もだらだらしてたとこ。
三橋がこんな時間に起きてるなんて珍しいな。』




*********




ぽちんとボタンを押し込んで、送信完了。


小さな画面を一度確認して、携帯を手に持ったまま泉はベッドに寝転がり、目を閉じた。


田島とは頻繁にメールのやりとりをしているらしい三橋だが、泉の元に来るのは部活の連絡やら課題のことやら、事務的な内容のメールが殆どだった。


泉自身、あまりマメにメールのやりとりをする方ではないので気にはしなかったが、かといって、こんな他愛無いメールに憧れなかったと言えば嘘になる。




嬉しい。



ニヤける顔を引き締めようと、ぱちんと片手で頬を叩いた。




*********




From 三橋
Title Re:Re:Re:あのさ

『今日はあんまり眠くなくて。
泉くんは眠くない?』





From 泉くん
Title Re:Re:Re:Re:あのさ

『俺はいつも12時ぐらいまで起きてるからなー。
でもあんまり夜更かしすんなよ。今日も、授業中寝そうになってたじゃん。』




*********




(授業、中……今日の、英語の時間のこと、だ。バレて、る……)



シーツの上にぺたんと座り、三橋は慌てたようにぱくぱくと口を動かした。メールの相手に伝わるはずもないのだけれど、見透かされていた気恥ずかしさに、ついつい挙動不審になってしまう。



(本当は、眠いけど、夜更かしするな、って言われても、)


(今日は、ダメなんだよ)



今夜は泉にメールをすると決めていた。落ちてくる瞼を必死に持ち上げて、精一杯はやく返事を返そうと、携帯を握りしめていた。


泉は、まだ気付いてないのだろうか。気付いていなければいいのだけれど。



(だって、明日は、)



心が逸る。

時刻をちらちらと何度も確認しながら、浮き立つ気持ちを押さえつつ、そっと、短い文章を打っていく。


送信ボタンを押す指が、少し震えたような気がした。




*********




From 三橋
Title 
Re:Re:Re:Re:Re:あのさ

『お誕生日、おめでとう』




*********





【 着信  泉くん 】





『あ、え、泉く』


『ごめん、夜中に電話して。……でも、なんだよ、さっきのメール』


『ごめ、おれ間違っ……?』


『ちょ、ごめん!間違ってねーよ!誕生日だよ、忘れてたけど。そーじゃなくて、』


『……?』






『すげー、嬉しかった』


『一番に祝ってくれて、ありがと』






『どういたし、まして!』


『あのさ、』


『 ?』


『明日、練習終わったあと、暇?』


『うん』


『そのまま空けといて。
一緒にいたい。誕生日プレゼントは、それでいーから』


『プレゼントも、ちゃんと、あるのに』


『マジで?それも欲しい!』


『わがまま、だ!』


『誕生日だから、大目にみてよ』


『いい、よ。明日は一緒に、いよう』


『おう』


『プレゼント、楽しみにしてて、ね』









Re:Re:Re:Re:Re:あのさ


(久しぶりだ、誕生日がこんなに嬉しいだなんて!)



(ハッピーバースデー、俺!)















ハッピーバースデー泉!
いつにも増して、似非泉と似非三橋になりました。すみません。愛はある!


081129







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