「お前のパンツ何色?」


そう泉に尋ねると、顔色ひとつ変えずに「紺」と簡潔な答えが返ってきた。ちなみに、水谷は深緑と黒のストライプらしい。スイカみてーだと言ったら、わざとらしく口を尖らせて拗ねていた。花井のは知らない。聞いた瞬間に、「変態みてーなこと言ってんじゃねーよ!」と頭を鷲掴みにされたから。


「田島はなんでそんなこと聞いて回ってんの?」


7組の教室でミーティングでもしていたのか、花井の隣にいた栄口が一連のやりとりに苦笑しながら口を開いた。栄口にはまだ聞いていなかった、と思い出した俺が口を開くよりも早く、花井がじろりとこっちを睨む。


「勝負パンツをさー」
「勝負パンツ?」
「うん。どんなのがいいのかわかんねーんだ」


ぱちくり。
そんな音がしそうな感じに見開かれた目がよっつ。モモカンがするように俺の頭を締め付けていた花井の手がゆるんだので、その隙に素早く抜け出した。
しょうぶぱんつ、と栄口はまるで未知の生物の名前を唱えるように唇を動かす。


「ゲンミツにかっこいーのがいいじゃん、やっぱ」
「まぁ、それは、うん」
「落ち着け栄口!そんで田島、お前はさっさと教室に帰れ!パンツの好みは俺らじゃなく相手に聞け!」


ああ、それもそーだ。
納得した俺は7組の教室を飛び出して一目散に。三橋は教室にいるはずだ。弁当はもう食い終わっていたから、寝てるかもしれない。早く、早く。
飛び込んだ9組で、しかし予想外に三橋は起きていた。浜田と泉と一緒に、なんだかでかい半透明のタッパーを囲んでいる。曇った容器ごしにうっすらと透ける赤色。


「おかえり、田島くん」
「田島も食う?浜田が持ってきたんだよ、イチゴ。乙女趣味でキモい」
「食ってるくせにその言い草かよ!」


きゃんきゃんと騒ぐ外野は無視して、俺の目は目標へと一直線。俺んちの畑で取れるよりもでっかいイチゴを、一生懸命に頬張るあいつに。


「三橋!」
「な、に?」
「三橋、なにいろが好き?!」


三橋は、俺の勢いに押されたのかびくりと身体を跳ねさせて、それから困ったようにそわそわと目を泳がせる。答えがないときの三橋のクセだ。でも、俺は答えが欲しい。
じっとその目を見つめていると、三橋は思いついたように手に持ったままだった噛りかけのイチゴを見て。


「イチゴ、色!」
「そっか!」


俺の、イチゴ模様の勝負パンツに三橋が目を丸くするのは、そう遠くない未来のこと。



















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0902




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