アサルトライナーの続編















ぐっと掴まれた腕が熱い。

服の布地越しにその熱が肌を責める。自分の体温と田島の手のひらの熱がじわりじわりと溶けて交ざって、どちらのものなのかもう分からない。

決して強く掴まれているわけではないのに、腕に吸い付いた手を解けない。困惑に似た感情に喉を絞められて、声すら発することは叶わなかった。

冬空の下、標本のようにフェンスに縫い止められたまま、三橋は田島の瞳を見つめる。普段の笑顔を消した田島の瞳は太陽よりもよほど強くて、何故かひどく苦しい。

「三橋は絶対に振り向くよ」という、いつか田島が告げた言葉が、頭の隅でチカチカと点滅を繰り返している。














二度目の告白は夜道での唐突なものだった。
一度目は、上手く思い出せない。暗闇に突然光を射し込まれたような驚きに、ひとつふたつと瞬きをするだけで精一杯だった。
三橋の動揺を悟っていただろう田島は、それでもまっすぐにこちらを見つめていた。晩夏の太陽が目を刺しながら照っていたことだけを覚えている。
まっすぐな田島の視線に酷似した太陽と、屋上のフェンスが地面に刻む陰影。



あれから、もう季節は変わってしまった。
冬の空は薄らぼやけた灰青色で、陽光も磨りガラスを透かしたように頼りない。
田島の口が開き、ほろりと白く空気が色付く。


「三橋、」


それだけ呟いて、田島はふつりと沈黙した。五本の指で三橋の左腕を掴んだまま。熱い手のひらに夏の名残を感じる。屋上をひゅうと冷たい風が吹きぬけ、背中を預けたフェンスがきしりと鳴いた。


「諦めろ、って言ってくれよ」


田島らしくもないマイナスな発言に、三橋はぱっと顔を上げた。やはりあの日のようにまっすぐな視線でこちらを見据え、田島が軽く呟く。


「三橋に、諦めろって言われたら諦められるかもしんない」
「そ、んなの、」


イヤだ、と思ったのが何故なのかは分からない。けれど、とっさに掴まれた左腕を引き寄せていた。田島の手のひらは離れず、代わりにぐらりと身体が傾く。三橋の頭の横に田島が片手を着いたから、フェンスと田島の身体に挟まれて少しばかり窮屈だった。二人ぶんの体重に再びフェンスが軋む。
鼻先が触れそうで、触れない。間近に迫った強い瞳は冷たい冬の風に潤んでいた。


「イヤじゃねーの?」
「イヤじゃない、よ」


田島の息が頬をかすめる。ぴたり、触れ合った胸元が熱くて溶けそうだと思った。この感情の名前が分からない。でも、決してイヤなものじゃない。頬に落とされた唇も。


「俺、三橋のこと好きだ」


三度目の告白に波立つ心臓を持て余し、三橋は小さく目を伏せた。打ち抜かれたように心臓が痛い。この感情の名前が分からない。


また頬に唇を落とされて、冬の空気にフェンスが鳴いた。



























─────────

田島→←無自覚三橋。
「諦めろって言え」っていうのも攻撃のうちだよ!うちのサイトでは田島様=最強です。


10.0124

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