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↓以下、拍手お礼文。
おお振り/泉→←三橋
――――――









俺は、三橋が好きなんだと思う。

女の子は、ふわふわして甘いにおいがして、なおかつ柔らかそうで、可愛いと思う。中学のころ好きだった女子や、グラビアのアイドルなんかも、そんな感じだったから。女の子は砂糖菓子のようで、甘そうで、可愛くて、まぁそんな感じ。


「三橋、ほっぺた」


練習中にでも付いたんだろう、三橋の頬は土で汚れている。指摘すれば、三橋は練習着のまま「あ」とか「う」だとか、よくわからない返事をしながら、俺が指差すのとは反対側の、右の頬を手のひらでこすった。
見かねて、片手で三橋の左頬を拭ってやる。


「ありが、とう、泉くん」
「ん」


適当に答えて、自分の親指についた土をシャツの裾で落とす。三橋は柔らかくもないし甘いにおいもしない。舐めたら多分、じゃりじゃりした土の味だけが舌に残るんだろう。


「さっさと着替えちゃえよ、早く部室閉めないとシガポがうるせーから」
「ごめ、」
「いーって」


良くない、眠い。早く帰って寝たい。もたもたと両手を動かす三橋を見ながら、どうして俺はここに居るのか考える。
三橋は女子じゃない。可愛いとか、守ってやりたいとか、そんな甘ったるい感情はない。今だって、そうだ。
シャツにこすりつけた土が、白い布生地を茶色く汚している。さっきまで三橋の頬についていた、それ。

三橋は相変わらずたどたどしい手つきで着替えを続けていて、俺はただその様子を見守っている。シャツからのぞく、白い肌。練習中には日に焼けない胸元。この肌を、俺以外の何人が見たのだろうか。そんなことを考える自分が気持ち悪い。
三橋は脱いだ練習着をカバンに突っ込んで、羽織ったシャツのボタンを上からひとつひとつとめていく。不思議と腹がたったりは、しない。


多分、俺は。


そうすべきじゃない、ということは分かっていた。三橋の腕を引き寄せるべきじゃなかった。ぐらり、と簡単に傾いた身体を抱き止めるべきじゃなかった。俺が腕を引っ張ると三橋は容易くバランスを崩して、それがまた無性に悔しい。こんなにあっさりと崩れるなんて。


「なぁ、簡単に倒れんなよ」
「泉、く」
「抵抗くらいしろよ」


抱き止めた三橋の頬を、ぺろりと舐める。薄く、土の味が舌に残る。


「おれは、泉くんが、」


三橋が言い終わる前にその口をふさぐ。睫毛と睫毛が触れそうな距離で、三橋の瞳は驚いたようにきゅっと動いた。
お前が俺のことをどう思ってるのかなんて、そんなの、聞かなくたって、


「知ってるよ。」


多分、俺は三橋が好きなんだと思う。
ふわふわした、甘いにおいのする女子じゃないけれど。汗臭くて土の味がするこいつが好きなんだと思う。もたもたしてるけど、でも、何でもすごく真剣なこいつが。

あと少し覚悟が出来たら、そうしたら、ちゃんと伝えようと思うから、それまでは。


「もうちょっとだけ、待ってくれよ」


囁いた声は掠れていたけれど、三橋は柔らかく笑って答えてくれる。
ああ、俺はやっぱり、こいつが好きだ。













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