*イズミハ









栄口視点、イズミハ
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思えばその日は、朝から本当にまったくもってツイていなかった気がする。起きて着替えて朝飯を食って学校に行った、というまぁなんとも現実的な夢をみて、目をさましたら時計の短針はとっくに8時を過ぎていたし、綺麗にまとめた日本史のノートはカバンに入れるのを忘れたせいで提出できなかったし、数学では当てられた問題に限って間違えていた。本当に、厄日ってあると思う。
あーあ。
信号にことごとく引っ掛かりながら家を目指す。自動車の鋭い光が、澄んだ闇夜を切り裂きながらどんどん俺を追い越していく。ツイてない1日ももうすぐ終わる。部活後に巣山とファミレスへ寄ったせいで、ずいぶんと遅い時間になっていた。家族が心配してなければいいけど。でも、期間限定のマンゴーパフェは美味しかったから後悔はしない。よっつめの信号はまた赤で、俺はうつむいてカバンを抱え直した。

びゅん、と走り抜けた車のむこうがわ。道路沿いのコンビニに見覚えのある人影を見た。
色素の薄そうな髪が、店先の蛍光灯に透けている。ふわふわと揺れるその頭は、どうやらソーダバーとおぼしき水色のものをぱくりと、繰り返し繰り返しついばんでいた。
ああ、三橋だ。
こちらを向きかけていた三橋に合図を送ろうと、片手を挙げかけた瞬間、薄茶の頭は突然くるりと動いてこちらとは逆を向いてしまう。呼ばれた声に振り返るように。
つられて三橋の視線を追えば、その先には黒髪の。

(ああ、なるほど)

やっと青に変わった目の前の信号を横目で見ながら、でも横断歩道を渡るのはあきらめて、回れ右。俺は横道へと進路を変える。コンビニを迂回するように。

三橋の顔は見えなかったけれど、泉はそれはもう甘ったるい笑顔で。触れるか触れないかの位置まで肩をよせる仕草だとか、それを違和感なく受け入れる三橋だとか。
ああ、なるほど。
ひとり、納得しながら夜道を歩く。泉はパピコを持ってたなぁ。きっと、半分は三橋にやるんだろう。冷たいものを食べすぎて、三橋が腹を壊したりしなきゃいいけど。微笑ましい光景を思い返しつつアスファルトを踏む。厄日には違いない。違いないが、心は不思議と晴れていた。しあわせな光景は、俺をもしあわせにしてくれる気がする。

ちらりと、泉と目が合った気がするけれど、気づかなかったふりをしてやろうと思う。俺が目を離す寸前にやわらかく絡みあった、泉と三橋の指だとかも。










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イズミハと栄口は癒しです

ひそかに泉×三橋←栄口










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