淡いミルク色の壁紙の先に茶色い扉が見えてきた。 これからは毎日通うこととなる生徒会室だ。 少し胸がドキドキする。 緊張だってする。1位になるため自ら生徒会副会長に立候補し、この座を獲得したのだ。 これで功績を残せれば上にいる三年を超し、上位に入ることだって夢ではない。 暁久はドアノブに手をかけ、高鳴る胸に気付かぬふりをし、扉を引いた。 「きゃー!椎名くん!」 「わあ…!本物だあ!」 壁一面のガラス窓から太陽の光が差し込む生徒会室で、黄色い声に迎えられ暁久は虚を突かれた。 白い壁紙と茶色に統一された内装が清潔感を生み、仕事をしやすい環境だ。 そんな部屋の真ん中で縦に伸びた長机に、生徒会メンバーの会計と書記がすでに着いて、歓声を上げていた。 「僕、書記の笠原っていいます!僕達椎名くんに憧れて生徒会に入ったんです!」 「僕は会計の木々野です!身長低いチビだけど、椎名くんみたいに格好良くなりたくて!」 そう言う彼らは確かに背が低く、大きな瞳が女子みたいだ。 男子校であるこの学園ではモテそうだが、さぞや自分達の女顔にコンプレックスを持っていることだろう。 暁久も幼い頃はよく女子と間違われていたため、その気持ちはよくわかった。 「そうなんだ、ありがとうー!これから一年間よろしくね」 暁久は爽やかな笑みを浮かべ、握手を求める。 憧れのモデルが手を差し伸べてくれたことに、二人は目を輝かせて真っ赤になりながら握手に応じた。 「…いつからここは芸能人との握手会場になったんだよ」 「きゃっ!加賀見くん!」 背後から聞こえた不機嫌な低い声に、暁久の肩がぴくりと動いた。 緊張のためすぐに振り返ることができない。 (来た…) 不機嫌に眇められた目が盛り上がっていた空気を冷めさせる。 いつも不機嫌そうに細められながらも、目を奪われるほど整った顔立ち。 面倒臭いのかいつもネクタイを締めておらず、そんな雑な雰囲気が彼の魅力を高めていた。 彼こそが生徒会会長で暁久より上位にいる加賀見恭祐。 暁久の…、幼なじみで初恋の相手かもしれない、憎い男だった。 [しおりを挟む] 戻る |