真っ直ぐ歩けないほど人通りが多い交差点を渡っていると、突然腕を掴まれた。 息を切らせ走ってきた様子の編集者にお茶に誘われ、そこで読者モデルほど服を着回し雑誌に載ることはできないが、数ページの特集と私服公開をSilverだけで行うと契約したのだ。 暁久は生活に違う空気を入れたかった。 オシャレは好きだが、読者モデルになりたいだとか芸能人になりたいだとかは思ったことがない。 しかし寮と学校の往復で疲れてもいた。 知らない人と出会い、初めての現場で未知の世界を体験する。 それは刺激となり、煮詰まっていた気持ちをほぐしてくれた。 スナップモデルに毛の生えたような仕事をするようになり、暁久は大人気となった。 甘い顔にアーモンド型の瞳、綺麗な茶髪のトップを盛り、緩くカーブした毛先を跳ねさせている。 着痩せするタイプで一見細そうだが、均等に筋肉がついており身長も176センチと高い。 現代のモテる男子を体現したようだった。 女子からは格好良いと叫ばれ、男子からは暁久のようになりたいと、今年度の嵩頭学園への入学志願者が大幅に増えた。 その功績が大きく買われ、3月に発表された学内ランキングで暁久は7位と大きく飛躍したのだ。 (くそう…、でもあいつはもう4位なんだよな…) 靴の下で潰れる草を踏みしめ、高くなった太陽を背に暁久は生徒会室を目指す。 あいつとは、今日から生徒会長になったあいつのことだ。 モデルとなり世間からの目を気にしなければいけなくなった暁久は、ファッションに余計拘るようになった。 ランキングが上がり支給される奨学金は増えたが、服やらアクセサリーやら美容院代やらと出費がかさみ、さらに高額な奨学金のため上位を目指す必要が出た。 狙うはランキング1位、学内ナンバーワンだ。 [しおりを挟む] 戻る |