「きみたちに朗報だ!!」


包帯が捲かれた白い足。
かつかつと音をたてる松葉杖。

噂をすればなんとやら、だ。

実際は暁久が頭で思い浮かべていただけだが、本郷が満面の笑みで生徒会室に現れた。


(朗報…?悲報の間違いだろ)


無情にも言い切る暁久は、表面にはそんなことおくびにも出さない。
これもモデル業で鍛えた賜物だ。
こんなことのためにモデルをしているわけではないのだが。

暁久は爽やかさを保ちながら、ちょっと困ったように眉を下げた。


「本郷…?朗報ってなにが?」


一週間前より松葉杖の使い方がうまくなったようで、本郷は一直線に暁久たちがいる長机までやってくる。

歩きづらいだろうに、目を輝かす本郷にとってそんなこと苦ではないようだ。


「聞いてくれたまえ椎名くん!ついにあの不良グループを壊滅させる方法を思いついたのだ!」
「いや、壊滅じゃなく解散では…」


滅しちゃダメだろう、滅しちゃあ。
暁久は思わず突っ込んだが、本郷には届いていなかった。


「名案なんだ!きみたちも気になるだろう!?」


いや、べつに。

とは思ってても言えない。
言ったらめんどくさいことになるであろうし、加賀見にいたってはすでに寝ている。

薄情者!


「ふふ…。その方法というのはだね」


そう言ってにたりと笑う本郷は、真行地よりよっぽど悪役っぽい。
真行地はやっていることは誉められたものじゃないが、何物にも囚われないという心根のもとでやっている。

それを知ってしまった以上、頭ごなしに彼を否定することはできなかった。


「あの不良グループは、旧校舎が使われていないにも関わらず、手付かずで放置されてしまったから、あそこに居ついてしまったのだ!」


本郷は皆のまえに立ち、重大な発見をした研究者のように大きな手振りをしながら声を張る。


「すなわち!旧校舎を取り壊せば万事全て解決というわけだ!!」
「…、は…?」



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