休日が終わり新しい一週間が始まった。 まだ授業は簡単な内容で、一日がラクに終わり放課後を迎える。 先週から始まった生徒会業務で、今日も暁久は生徒会室に来ていた。 「椎名くん、書類のこの部分の意味って…」 「ああ、それは…」 生徒会役員四人が集まり、仕事をする生徒会室には静かな時間が流れている。 顔合わせの際、暁久と会えるなんてとはしゃぐ笠原たちを牽制していた加賀見だが、仕事が始まれば突っかかってくることもなく、仕事を行っている。 やる気を見せなかった彼だけに、文句も言わず机に向かう姿に、暁久は内心ほっとしていた。 これで胸にわだかまる気まずさもなくなれば良いのだが。 暁久は加賀見に、お前は幼なじみのキョウなのかと、いまだ聞けずじまいでいた。 笠原たちがいて聞きづらいのもあるが、いなくても易々と聞けることではない。 最悪の別れをした。 聞いたところで、そうだと言われてしまえば、暁久は加賀見とどう接すればいいのかわからなくなってしまう。 聞けるわけがなかった。 「あ、じゃあここにこれを書けば良いのかな?」 「うん。そうだと思うよ」 初めての仕事で戸惑いがちな笠原と木々野を、暁久はそばにいてフォローする。 暁久とて慣れない業務に手が止まることもあったが、持ち前の理解力の良さで仕事をこなしていた。 「椎名くんよくわかるねー」 そばで会話を聞いていた木々野が感心したように暁久を見る。 同意して何度も頷く笠原に、暁久は片眉をさげた。 「なんとなくだよ。違ってるかもしれないし。違ってたらごめんね」 「そんな…!椎名くんが間違ってるわけないよ!」 「もし間違ってても椎名くんなら全然良いし!」 「ねー!」 語尾にハートマークがつきそうな声色で笠原が同意する。 二人はとことん暁久に甘いようだ。 しかし二人に流されるほど、暁久だっておめでたくはなかった。 爽やかな笑顔を浮かべながらも、暁久は冷静に胸の内でつっこむ。 (いや、間違ってたら大変でしょう) 日々増えていく仕事で、やり直していたら仕事が滞る。 そんなことは副会長として極力避けたい。 (それでなくても本郷がめんどうなこと言って仕事の邪魔をするんだから…) 旧校舎にたむろする不良グループ。 彼らを解散させようと無謀なことを言っているのだ。 言えるわけがない。 本郷が立ち向かおうとしている不良グループのリーダーにキスをされたなど。 そのうえ、俺のものにするとまで言われていることを…。 思い出して暁久は頭を痛くする。 (あんな一癖も二癖もあるような人が、簡単に言うこと聞いてくれるわけないじゃん…) ため息が喉を過ぎそうになる。 そんな暁久を押しとどめるように、いつか聞いたような生徒会室のドアを開ける音がした。 [しおりを挟む] 戻る |