幼さの残る茶色く大きな目。白い頬はまだ膨らみがあり大人の男になりきれていない未熟さを感じさせる。


「えーと、…だれ?」


暁久が見つめる視線の先で、その少年は一年を示す青色のネクタイを締めていた。


「すみません、そこどいてください」


暁久はその物言いに目を見張る。
雑誌に出るようになってからぞんざいな扱いを受ることがなくなったため、少年の素っ気なさは新鮮で興味深かった。


(なんなんだ、こいつ…)


青いネクタイは新一年生の証だ。今日から入寮できるはずだが、学園に来て片付けもせずこの旧校舎に来たのだろうか。

こんな不良の溜まり場になぜ…?


「なんだよ一年。ここに用か?」


暁久に迫ったときの空気はどこへやら。
暁久を捕らえた色気のような魅力を引っ込め、男は入り口に立つ少年へ声をかけた。


「噂で聞いたんです。この学園に強い不良チームがあるって」


暁久は少し驚いた。

旧校舎のことは学外へ噂となって広まっていたのか。
思いのほか大事になっていた事実に、本郷がチームを解散させようと躍起になるはずだと納得する。

少年は男を真っ直ぐとらえ、すっと息を吸った。


「僕をチームの一員にしてください」
「なっ…」


思わず暁久は声が出る。
その続きを心に押し止めるのは容易でなかった。


(なににぃいいっ!?)


教室にいる不良達からも驚きの声が上がった。

髪を染めておらず、耳にピアスの穴すら見当たらない。すれたところなどなさそうな少年が、不良と仲間になりたいと言い出すとは想像していなかった。


(チームを解散してもらいに来たのに、人数が一人増えましたなんて言ったら…)


ムンクの叫びのごとく顔を細め、叫び嘆く本郷のことを考えげんなりする。
本郷なら間違いなく喚く。

彼とは知り合いじゃなく生徒会室で顔を合わせただけだが、妙に確信できるのは先程の熱意が強烈だったせいだろう。


(あの風紀委員長…、いつか絶対辞めさせる)


密かに決意し、まだ清純そうな一年生を説得するため口を開こうとしたが、それよりさきに男が低い声をかけた。



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