旧校舎は現在使われている校舎の裏手にあり、使われていないとはいってもまだ新しく綺麗な建物だ。
生徒には最新の設備を提供している嵩頭学園じゃなかったら、現役として使われていただろう。


「ここか」


暁久は目の前にそびえ立つ旧校舎を見上げる。
ここに不良チームがたむろっているというが、旧校舎と一言で言っても4階まであり具体的な居場所まではわからない。


「まあ近付けば声が聞こえるだろ」


使われなくなって久しい扉をくぐり、埃っぽい廊下を進んだ。電気が入っていないため薄暗いが、窓から太陽の光が入っているため不自由はない。
教師の目を気にせず過ごせると思えば、なかなか快適な場所だろう。


1階、2階と何事もなく進み、ついに最上階である4階への階段を上りきった。
この階には3学年の教室が集まっているようだ。しかし白い壁と教室が並ぶばかりで人影は見当たらない。

春休み中なため、全員帰省してしまったのだろうかと不安になりながら廊下の奥へ行くと、微かに男の声が聞こえてきた。


(ビンゴか…?)


暁久は足を早め、目的の教室で立ち止まった。
扉が閉められており中の様子はわからないが、確かに複数の人の声がする。扉の横にあるプレートには3-Aと書かれてあった。

鼓動が重く、ゆっくりと鳴っている。
緊張していた。

体の大きさもあり笠原達より暁久のほうが適任だと思うが、暁久とてケンカ慣れしているわけではない。
もし囲まれ、殴りかかられたら…。


(来週末に雑誌の撮影があるから、顔だけは殴られたくないんだけど、)


相手にしてみれば知ったことではないだろう。

暁久は扉の先にいるだろう不良達を見据える。

足音を忍ばせ扉に手をかけた。


(なにかあったら本郷を恨んでやる)


冗談じみた悪態をついて気をまぎらわせると、手が止まらぬうちに一気に開けはなった。

扉を横滑りさせた音が響く。教室中の視線が暁久へ集まった。
目の前に現れる視界を曇らす白い紫煙。
鼻をつく煙の臭い。

着崩した制服と、片手にもったタバコをくゆらせた不良達がたむろしていた。


(…あ、…)


暁久はその奥にある黒いソファーへ目を惹かれる。
ゆったりとしたソファーで寛ぐ、赤みがかった黒髪の男。
他とは雰囲気の異なる存在感がある。

男の眼差しがすっと動き、暁久と目が合った。


「誰だテメエ!」


突然乱入した暁久に、はしから威嚇の声がかかる。
咄嗟にそちらへ意識が逸れた。
教室のすみで座り込んでいた派手な髪色の男が立ち上がり、眉間に皺を寄せて半眼で暁久を睨んでいた。



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