04


放課後になると日が傾き始めた。
いつもならここで夜をともにする女を探すところだが、今日はその必要がない。
夕食を慶冶のところで食べるかは決めていないが、夜を過ごす場所は決まった。
慶冶のアパートなら近いためすぐに行けるし、兄弟みたいに育ったため行くにしても気が楽だ。

信用のおけない女とともにいるより、ずっと安心できる。


踵を潰して履いた靴を鳴らしながら生徒玄関へと向かう。
部活が始まる時間なため、廊下を歩くのは俺のように帰宅部の連中ばかりだ。


「柏原」


せっかく普段より機嫌良くいたのに、無粋な声に呼び止められて俺は途端に不機嫌になる。

しかもこの堅苦しく偉そうな言い方をするのは、俺を目の敵にする生活指導のベテラン教師だ。
ことあるごとに因縁をつけては俺を生活指導室に呼び出し、言いたいことを言ってくる。
こちらのことなど一切考ない、自分の論理を振りかざした押し付けがましい意見ばかりを言うこの教師、原田が俺は大嫌いだった。


「…なんすか?」
「なんすかじゃないだろう!お前はまともに敬語も使えないのか!」


そういうアンタは生徒をお前呼ばわりかよ。
蔑むような冷めた気持ちが俺の眼差しを鋭くさせる。
こんな教師としても大人としても軽蔑しかできない奴に口出しなどされたくない。

それが態度にありありと出てしまったのだろう。

原田は無造作に吠えては牙を向く飼い犬のように、俺の態度を批判してきた。


「お前は本当にできそこないだな!目上の人に対する態度というものが、お前はなっとらんのだ!」
「……」
「女とばかりいて脳みそがふやけてるんじゃないのか!?お前みたいな奴が社会に出たってやっていけるはずないんだからな!」


ああ゛…、うるせえな。
わかってんだよ、そんなこと…。


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