戦争記でプロローグ6
「―――と、まぁこんな感じか。」
「そうですね。」
「え、それで入部したんっスか?」
「入部届を持った5人に毎日追いかけられれば、ノイローゼだよ。」
「死にそうな顔でサインしたもんな!」
「貴方もその片棒担いでるのよ早川くん、わかってる?」

いつもの笑顔を浮かべてパックの牛乳を飲み切った早川は、それを意外にも綺麗に畳んだ。

「お(れ)はお前を入れる気しかなかったか(ら)な!」
「おい。」
「中(村)もだぞ?言いだしたの、あいつだし。」
「中村くーん?!」

話が読めていたのか、そっと出て行こうとしていた中村をひっつかんで
どういうことなのかなぁ?と向ける笑顔は、彼女の兄たちを彷彿とさせた。

「なんていうか…無理やり入れたって先輩たちが言ってたのも、あながちウソではないってことなんスね…」
「嘘というか、全部事実だか(ら)な。」
「ですね…」

あっけらかんと言う早川には、これっぽっちも罪悪感というものは見られない。
彼女のいる現状に、至極満足している、ということはひしひしと伝わってくるが。

「今のお(れ)たちがあ(る)のも、あいつのおかげだしなぁ。」
「?」
「お(れ)たち、何度もやばいときをあいつに引き上げても(ら)って(る)んだ。」
「やばいときって?」
「こんな言い方あ(れ)だが、先輩たち3人が一緒にダメになって、全員が一軍からも落とされそうになったことがあ(る)んだ。」
「は!?あの3人がッスか!?」
「意外だ(ろ)?」

今だからこそ笑えるのかもしれないが、早川は何でも無いようにつづけた。

「うちの要は先輩たちだ。お(れ)だって中(村)だって、先輩たちだからこのチームで本気でやってこうって思って(る)。」
「それは、俺だってそうっスけど…」
「あいつがいなかった(ら)、もしかした(ら)今(頃)レギュラーの半分はメンバー入(れ)替えになってたかもな。」
「マジっすか…」
「そ(れ)だけ、あいつの存在はお(れ)たちにとってデカいってことだ。」

よいしょ、と腰をあげた早川は黄瀬に向き直る。

「黄瀬も、あいつが好きだ(ろ)?」
「はい。」
「あいつも、お(れ)たちのこと大切に思って(る)。これは、間違いない。」
「俺も、そう思うッス。」
「お前はバスケ部でのあいつしか知らないか(ら)しょうがないけど、教室でのあいつはもっとクー(ル)っていうか、前に(森)山さんが言ってたみたいに女子か(ら)人気が出(る)く(ら)いにはかっこいいぞ。」

黄瀬は、目線を早川から、未だ中村をひっつんでいる彼女へ移した。
確かに中性的な顔と声で背も女子にしては高い彼女は、どう贔屓目を除いてもきれいだ。
でも、自分たちの前ではふんわりした笑顔でいる事が多いため、噂のようなカッコイイ彼女の方がレアものだった。

「ふーん…?」
「まぁ、いつか感じ(る)こともあ(る)だ(ろ)。」
「そうッスかね…?」

また別の疑問は残ったものの、黄瀬から尋ねられた彼女との馴れ初め話はこうして幕を閉じた。


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bkm
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