中途半端な だから | ナノ
Moriyama side

持て余した暇を消費するために、俺と笠松、小堀は3人でババ抜きをやっていた。
まあ、3人でやるババ抜きなんか直ぐに終わるが、それはそれでなかなかに白熱した。
途中で笠松に用事があって来たらしい中村を交えて更に激化したそれは、数度回数を重ねた後最終戦を迎えていた。
最後だし、負けたやつは何か言うことを聞くという罰ゲームがかかっているため
残った俺も中村も真剣だった。
2枚のカードの上を、俺の手がふらふらと揺らぐ。
いつも以上にポーカーフェイスを守り抜く中村から1枚抜き取ってひっくり返した時、あいつは少し残念そうなため息をついた。

「っしゃー!」
「お、あがりは森山か。」
「…何したらいいんですか?」

カードを片付けながら潔く言う中村に、俺たちは同じように首をひねった。

「何がいいかなー」
「んー…」
「あ。」

パチン、と小気味良い音を立てて指を鳴らした小堀が笑顔で言う。

「何か、あっと驚くことが欲しい。」
「あっと、驚くこと…」
「そ!」

最近そういうのないだろ、と言う小堀に
笠松も確かにと頷いた。

「じゃあ、そうしよう。いいか、森山?」
「ああ。」
「なら、この間行ったパワースポットで起こった、」
「そういう話は間に合ってる」

バッサリと言い切った俺に、中村は少しむくれた。

「他!そのテの話は聞き飽きた!」
「…そうですね。」

じっと今度は中村が考え込む。
待っていると、中村が思いついたように顔をあげるのと同時に予鈴が鳴った。

「今日、部活前に俺と早川を迎えに来てもらえませんか。」
「は…?」

何も話が読めていない俺たちを残して、中村は薄く笑って教室を出た。

「あっと驚くもの、用意しておきますから。」

ぱたぱた去っていく足音に、俺たちは訳も分からないまま顔を見合わせた。

△▼△▼△▼△▼△▼

Kobori side

放課後になった。
約束通り、俺たち3人は授業が終わると同時に2年生の教室を目指した。

「なんだろうな?」
「さーな。」
「結構な無茶振りしたと思ったんだけどなぁ。」
「え、お前それ分かってて言ってたのか。」

森山の何とも言えない表情に、ただにこりと笑顔を返して。
階段を1つあがったところで、携帯をいじっている中村を発見した。

「中村!」

笠松の声に顔をあげて、ポケットへ携帯を仕舞った。
自分は既に愛用しているスポーツバッグを肩から掛けている。

「あれ、今日は早川は?」
「一緒じゃねーのか、珍しいな。」
「まあまあ。約束のもの、見に行きましょう。」

薄く笑った中村が歩く後ろをついていくと、3つほど教室を通り過ぎた所で足を止めた。

「中村?」

首を傾げて呼ぶと、俺を見上げながらジェスチャーで黙るように指示される。
俺たちが口を閉じると、口元にあてていた手をそのままに、教室の中を指さした。
3人でトーテムポールのようになりながらそっと覗き込む。

「(…なんだ?)」
「(ふつうの教室じゃん。ここ、お前らのクラスだろ?)」
「(……ちょっと待て。)」

笠松が何かに気が付いたようだ。

「(あれ…早川、だよな?)」

口元が引き攣る笠松が指さす先には、確かに後輩の姿。
だが、問題はそこではなかった。

「じょっ!!(女子!?)」
「(森山、しー!)」

咄嗟に大声が出た森山の口を慌てて塞いで、俺ももう一度目を向ける。
森山は一番に、話し相手が女子な事に反応したが、もう一度言う。
問題はそこではない。

ドアからほんの少しだけ離れた所で談笑する2人。
勿論、会話だって聞こえてくる。
の、だが。

「When he made a slam dunk,he dealt a face a heavy blow to a goal.」
「Oh…Was he OK?」
「No probrem. He is strong.」
「ふふ、You mentioned about your teammates to me. You like them very much.」
「Of course. They are my important friends.」

俺たちはあんぐりと口を開けたまま絶句した。
後ろでは、中村がおかしそうに少し笑いながら見ている。

「どうです?「あっと驚くこと」は。」
「マジかよ…」
「あの早川が…」
「なんで英語ならラ行言えるんだよ…」

確かに、早川は成績はそこそこよかった。
だが、その中なら英語、特にリスニングやOCは点数は低かったはずだ。

「彼女は早川の先生であり、親友なんですよ。俺もですけど。」
「どういうことだ…?」
「続きは本人からどうぞ。Hey!」

中村が呼びかけると、早川がこっちに気が付いた。
同じように彼女もこっちを向いたけど、すぐに早川へ視線をもどした。

「Who are them?」
「My teammates. Shall I introduce them to you?」
「Ah…I decline. Thank you.」

一言二言話をして、早川は彼女との会話を「Bye.」と切り上げた。
鞄を持ってやってきた早川は、俺たちがよく知る早川だった。

「何でここに先輩たちがい(る)んです?」
「何でお前日本語だとラ行言えねえんだよ。」
「不思議でならんわ。」
「?」
「彼女、誰だ?」

俺が尋ねると、早川は笑顔を浮かべていった。

「(俺)と中(村)の英語の先生っス!」
「教えてもらってんのか。」
「はい。そのかわ(り)に、(俺)たちが国語を教えてます。」
「へえ。」
「かわいい子だな。ちょっと俺も挨拶に、」

いつもの病気が発症した森山が、荷物を纏めている彼女へ近寄ろうとしたとき。
早川がドン、と力強く壁へ手をついて道を塞いだ。
びくりと肩を揺らした森山に俺も早川を見るが、一瞬でやめておけばよかったと後悔した。

「あいつには、そ(れ)、止めても(ら)えませんか。」

ぎろりと効果音がしそうな勢いで森山を睨み付ける早川。
いつもは俺たちに特に懐いている気がある早川には、珍しい表情だった。

「わ、分かった…」

完全に気圧された森山が一歩後ずさって言うと、表情を戻してまたにこりと笑った。

「さ、部活行きましょう。黄瀬がもう待って(る)かもし(れ)ません。」

早川に背中を押され、俺たちは仲良く体育館への道のりを歩き始めた。

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