俺たちの交換日記 | ナノ

お忍びお出かけレディ

「ちょっと、見た!?この間のアマチュアのミニリーグ!」

部屋へ入るなり、開口一番にそう言った。
賑やかな登場に溜息をつきながら、ロッカーの扉を閉めて答える。

「ええ、東京でやってたやつでしょう?」
「そうそう!何年か前に忽然と消えてから行方知れずになってた、“幻”が出てきて優勝したって!」
「ええ、見たわ。」

ねえ?と視線をキャプテンへ向けると、珍しく少し楽しそうに微笑んで話の輪へ加わった。

「丁度東京へ行く用事があったから、生で見て来たよ。なかなか、白熱した試合だった。」
「そうそう!いいなあ、本物見に行きたかったなぁ。」

今度は残念そうに肩を落とし、少しむくれた表情でベンチへと座った。
キャプテンは、途中まで書いていた日誌に視線を戻しながら、更に続けた。

「そうしょぼくれなくても、すぐに会えるよ。」
「え?」

周りのメンバーが首を傾げると、笑顔を湛えたまま一枚の紙を差し出した。

「もう、準備は整ってる。あとは待つだけ、さ。」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

所変わって、こちらはいつもの学生寮。
リベンジマッチを終えてから、早3日が経っていた。

しっかりと勝利を手にし、あの後きちんと湊の分のメダルも持ってやってきた紅も笑顔を携えていた。
若干は紅のためにリベンジマッチに出た節もあった湊は、安心したように緩く微笑んでそれを受け取った。

―――だが、そこからが大変だった。

足の調子が芳しくなく、湊は当分の間サポーターをつけて生活することになった。
勿論、テーピングも。

普通ならばそこまでの必要はないのだが、リコや兄たちが押さえつけておかないとまた無茶をしたりするからと言いだしたのだ。
湊は勿論反対した。
別に平気だと連呼する湊を黙らせたのは、まさに鶴の一声とも呼べる笠松の一言だった。

「別にお前ならあってもなくても、日常生活に支障はねーだろ。ならつけとけ。」

ぐうの音もでない、とはまさにこのことで。
自分がずっと背を追ってきたキャプテンからの、自分を買う言葉。
否定することはできないし、したくない。

ややあってから吐き出されたのは、溜息と諦めだった。


と、いう事で未だに湊の足にはサポーターが巻かれているわけだが。


「湊!ダメだって!何かいるな(ら)、(俺)たちがや(る)か(ら)!」
「コーヒーか?ブラックでいいのか?」
「ああ…うん…」

メンバーたち、とくに海常の6人が今まで以上に過保護なのだ。
カップを持って立ち上がりかけたのを押さえ付けられ、そこに中村がさっとやってきて横からそれを攫っていく。


3日間、当たり前ではあるがマネージャー業は休業中。
桃井の代わりにデータ取りをしたり、部誌を書いたり。
ここ3日の湊の定位置は、第3チームのスコアボードの隣だ。
毎日行くと、先にきて用意をしている1年達がわざわざそこにパイプ椅子を出しておくようになってしまった。

本当なら動いている方が性に合っている湊だが、メンバーたちの目が光っている状態では何もできず。
仕方なく、高校時代からずっと使っているジャージをひざ掛けにしてひたすらスコアをつけ続ける日々を送っている。

挙句の果てには、オーバー190のメンバーが居る間は荷物の様に抱き上げられて移動される。
隠れて色々やっていると、誰かがやってきて声をかけられる。


正直、げんなりしている湊。

最初の方はまだよかったのだ。
初日は、こんなに大切にされて贅沢だなあ、くらいにしか思っていなかった。
いつもは世話を焼くのが仕事なので、たまには新鮮だなとすら感じていた。

だが、2、3日もすればこのザマだ。
元々湊は甘やかされるようには、出来ていないのだ。
練習後の自由時間も、部屋にいる他ない。

丁度明日は土曜日。
午後は自主練が入れられ、本格的にやることもなくなってしまう。
やりたいこともあるが、きっとそれも誰かを連れていなければ許されないだろう。

今までの自分の行いが種とはいえ、流石に常軌を逸していることに、やっと湊は気付き始めていた。

「湊?」
「あ、ごめん。ありがとう。」
「いや。…どうした?」
「ううん、何でもない。」

湯気のたつコーヒーを持って戻ってきた中村に笑顔を向けながらも、湊の頭の中では既に犯行計画が練られていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


次の日。
しっかりと午前中の様子を見学した湊は、部誌を書くからとコーヒーを淹れて自室へ戻った。
ご丁寧に、いつもはリビングに置きっぱなしのノートパソコンまで持って。

ぱたり、とドアを閉めたところで計画を実行に移す。

いつぞやに使われたっきり借りたままになっていたリコの変装一式。
黒いボブのウィッグをかぶり、いつもなら着ることもないであろうふわりとした膝丈のワンピーススカートを履いて。
全体的に淡い色でまとめられた服装。
靴も、流石にヒールは避けたが、編み上げのブーツを選んで足を通した。
いつもなら多少乗せる程度の化粧もばっちり決めて、湊は部屋にある姿見の前で一度くるりと回った。

「うん、完璧。」

仕上げに部屋の音楽を、わざと外へ若干洩れるほどの音量でながしてから部屋の窓をあけた。
サポーターは、一応良心が痛んだのでリュックの中へ財布と携帯と共に突っ込んだ。

「さて、と。」

ぐ、と窓枠に足をかけて外のへ出る。
下に張られているフェンスの上を器用に歩いて、適当な場所で降りる。
普通ならば通らない道を通って、普通の学生たちに交じって校門から堂々と外出。
完全犯罪だな、と自画自賛していると、携帯がふいにピロンと一度だけ鳴る。

開いてみると、片割れからの短いメッセージ。

【夕飯には、戻って来い。】

思わず目を見開いたものの、ややあってから吹き出すと返事を打ち出す。

【6時半に戻るようにする。】

送信を確認して、湊は久しぶりのひとりを楽しむべく、街へと繰り出した。




「裕也?」

湊の部屋のドアの横で背中を預け、仕方なさそうに笑いながら携帯を見る裕也に、小堀が声をかけた。

「何すか?」
「どうしたんだ?何かあったか?」

お前の部屋、反対側だろと続けられた問いに、携帯をポケットに仕舞って言った。

「いや、湊にちょっと用事があって。部屋覗いたら音楽かけて外の声とか聞こえないレべルで集中してるようだったんで、後にしようかと。」
「そっか。」
「今は、邪魔しないでやってくださいね。流石に何時間かしたら集中力切れて出てくると思うんで。」
「ああ、そうだな。」

疑う様子が微塵も見られない小堀の笑顔に、多少の罪悪感を覚えながら。
久しぶりに日の目を見そうな、自分の部屋に置いてあるであろう金の長髪用ウィッグの在りかを辿った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「さて、何から行こうかなー。」

少し悪い事をしている実感はある。
半日は他のメンバーも買い物やらに出ているので、鉢合わせる可能性だって十分ある。
バレる気は全くしないが、このスリルが今の湊には堪らなかった。

何となく歩いていると、丁度大きな電光板に今日からの映画の告知。

「そういえば、真也くんが原作読んだって言ってたな…」

推理物で、最後の最後にくるどんでん返しが凄かった、との感想をいただいていた湊は一度読んでみようと思っていた。
だが、まとまった時間も取れずに放置されていたそれに、ここで映画を見てしまった方がいいのではという気持ちが芽生える。

「…映画先に見てから、本でもいいか。」

湊は、足を映画館へと向けた。



土曜の昼と言うのもあって、映画館は混みあっていた。
初日と言うのもあって、夜遅くしかチケットは残っておらず、仕方なく他を選んだ。

最近よくCMで見る、外国アニメだ。
やっとこさチケットを買って、ポップコーンは諦めてシアターへ入る。

席へ座ると、少し前の列にここでは見ないだろうと思っていた面々が。

「こら、敦。ちゃんと座らないか。」
「いーんだし、これで。」
「腰を痛めるぞ。」
「つーか、俺ケーキバイキング行きたいって言ったのに無理やり連れて来たの室ちんっしょ。座り方くらい自由にさせて欲しいし〜。」
「まったく…」

トイレに行ってくる、と荷物を紫原へ預けた氷室が見えなくなったところで、紫原がふいに後ろを振り返った。
変装した湊には気が付かなかったようで、自分のちょうど真後ろに座っていた小さな女の子に声をかけた。

「これくらいなら、見える〜?」

一緒に来ていた母親らしき女性は、急に振り返って話しかけて来た紫原に多少警戒したようだったが、尋ねられた言葉にほっと肩の力を抜いたのが見えた。
女の子はきょとりとしたあと、にっこり笑った。

「うん、ありがとう。おっきいお兄ちゃん。」
「ん。」

母親も、ありがとうございます、と声をかける。
返事に満足したようで、のそりとした動きでスクリーンへ向き直った。

予告が始まるギリギリで戻ってきた氷室も、座るときに紫原の姿勢の理由に気が付いたらしく。
仕方がないなとためいきをつきながら借りてきていたブランケットを、丸めて紫原の腰のあたりへ突っ込んでいた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

紫原の少しばかり不器用なやさしさを垣間見た、映画館での2時間。
映画も楽しんで見られたし、良い時間だった。

一応念のために二人を見送ってから映画館を出て、大きなスクランブル交差点に出る。
せっかくなので、自分の買い物をして帰ろうと、鞄を持ちなおして歩き始めた。





さて、所変わってバスケ部の寮。
時間は、16時を回り始めていた。

裕也は横目で行先ボードを見て、清志と森山が居ない事を確認する。
湊のためを装って自分のためのココアを2杯淹れて、何食わぬ顔でノックをして声をかけてから部屋へ入る。

相変わらず綺麗に片付いていて、こざっぱりしすぎているような気もする。
無駄なものは何もなく、唯一荒れている机の上も、他人から見れば感じる無秩序は彼女にとっては整然されたものなのだろう。

ぎしりと椅子に座って、そっと持ち込んだ紙袋を漁った。

「…………かわいい、妹のため、妹の…」





さて、1階ではそろそろ番犬たちがそわそわし始める頃だった。
邪魔してはならない、と飼い主である小堀と中村に釘を刺された二人は、たまにちらりと湊の部屋を見上げてしょんぼりとまた視線を落としている。

カップをふたつ持って部屋へ消えていった裕也を見る顔は、いつも騒がしい二人からは想像もできないほど無表情だった。

立ち上がった早川を、向かいで本を読んでいた笠松が止める。

「どこ行く。」
「…便所ッス。」
「便所なら、あっち。」

早川の体が向くのとは反対方向を指さして言うと、わかりやすくぶすくれた。
とうとう我慢が効かなくなった早川が文句を言おうと口を開いた時だった。
がちゃりと音を立てて、開かずの扉が開いた。

3人が同時に上を見上げる。

ぐ、と伸びをしながら部屋から出て来たのは、湊だった。

「湊!!」
「湊さん!」

分かりやすく声を明るく呼ぶ声に、湊はにこりと笑顔を向けた。

「何?」
「もー、湊さん長いッスよぉ。このまま夕飯まで出てこないのかと思ったッス!」
「ふふ、ごめん。やっぱり、集中してるとダメだね。」

困ったように言った湊に、早川はぴくりと肩を揺らした。

「………湊?」
「…なあに?」
「早川センパイ?」

首を傾げる黄瀬の隣で、早川が向ける視線は試合の時のそれによく似ている。
当たったことのない相手を見定める目、何かを探る目だ。
湊は笑顔を崩さないまま見返していたが、部屋から声が聞こえてくる。

「湊、これどーすんだ。」
「あ、うん。」
「えー!また戻っちゃうんスかー!」

部屋の中から聞こえたのは、間違いなく裕也の声で。
踵を返した湊に、黄瀬はまた不満そうな声をあげた。

「ごめんね、裕くんにも手伝ってもらってるんだ。早く終わらせて戻るから。」
「俺たちも手伝います!」
「涼太くん、事務仕事苦手でしょ?」
「う〜〜〜〜〜!!」
「ふふ、またあとでね。」

ひらりと手を振って、また部屋へ消えていく湊を無言で見送る3人。
黄瀬は不満を全面的に出してまたソファへどかりと座ったが、早川は湊の部屋のドアを見たまま動かない。

「…早川?」
「…あ、はい。」
「どうした、ドアを見つめても湊は降りてこねえぞ。」

笠松の言葉に、早川はただ不思議そうに首を傾げた。




「………ふ―――…」

ずるりとウィッグを取り去った裕也は、入り口のすぐ傍にある棚へ置いていた携帯を手に取った。
ボイスレコーダーが起動されたそれには、自分が妹を呼ぶ声が吹きこまれている。
早川が居る事を知っていたから取った手段ではあったが、どの程度誤魔化せたかは微妙な所だ。

「…マジであいつ、レーダーか何かついてんのかよ。」

呆れて漏れたその言葉は、想ったよりも疲労感が滲んでいた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


いつもは他のメンバーの買い物に付き合う事になるため、普段買えないものを調達できて湊は上機嫌だった。
両手に荷物を持ったまま、携帯を探す。
そろそろ戻らないと、裕也との約束の時間に遅れてしまうかもしれない。

ごそごそと鞄を漁っていると、ふいに目の前に影が落ちた。

不思議に思って顔をあげると、知らない男たちが自分を見下ろしている。
首を傾げると、男のうちのひとりは上機嫌に笑った。

「ほらぁ、すっげー可愛いじゃん!」
「確かに…ケバイかと思ったけど、この化粧の仕方ならスッピンでもブスって事はなさそうだな。」
「お姉さん、一人?」

失礼な事を堂々と述べながら言われ、湊は顔を顰めた。
やっと探り当てた携帯も、見ずに鞄へ戻して立ち上がる。

横を通り過ぎると、男たちはついてきた。

「お姉さん、これからどこ行くの?買い物?」
「ご飯食べてこーよ、俺たち出すからさぁ。」
「帰るんで。」
「まだ明るいじゃん、ちょっとくらい付き合ってよ。」
「嫌。」

ばっさりと断ると、楽しそうに笑う者もいたが、中の一人が肩を掴んで振り向かせた。

「何で?俺たちじゃダメ?」
「けっこーガッコでも人気高いよー、俺ら。」
「そーそー。引っかかっといて損はないって。」

笑いつづける男たちに、何が面白いのかとどんどん不機嫌が表情に出てくる。
時間に追われているのもあって、思わず癖で耳を触った。
それに気が付いた男が、ここぞとばかりに畳みかけてくる。

「わ、きれーな色。似合うね。」

無遠慮に伸ばされた手に、湊はとうとう荷物を振り上げた。
沢山の紙袋は、少し重い音をして男にあたった。

「…ってぇ、何すんの。」
「触んないで。」

ぎろりと睨み付けると、肩を掴む男が愉快だとばかりに笑った。

「俺、強気な女だーいすき。」

肩をそのまま引き寄せられて、湊へ顔を近づけた。


目を見開いた湊は、キスされるギリギリの所で後ろから何かに引っ張られた。
距離を取りなおした湊の少し上から、優しい声色が降ってくる。


「お時間です、シンデレラ。」


驚いて目を見開いて見上げると、してやったりとばかりに笑う森山の姿。

「よし、たかさん、」
「そろそろ夕飯の時間だぞ、戻ろう。」

普段通り声をかける森山に、湊は目を白黒させるばかりだ。
荷物を半分受け取って、空いた手を取って歩き出す森山へ男たちは声を荒げた。

「テメェ、横から急に入ってきて何勝手なコトしてんだ!?ア゛ァ!?」
「先に目つけたのは俺らだぞ!!」

無視を決め込む森山に、とうとう男の一人が拳を振り上げた。
気が付いた湊が振り返るが、森山はそっと背中を押して距離を取ると男の拳を避けて手首を掴んだ。

不意をつかれた男はなされるがままで。
男の手を背中へ回して少しだけ上へ持ち上げる。

「い゛だだだだだ!!」
「先に目を付けた?笑わせんなよ。」

ぱっと手を離して背中を強く押すと、男は仲間たちの前へ無様に膝をついた。

「こちとら年単位でこの子見てきてんの。お前らとは年季が違うんだよ。」

湊から顔は見えないが、声はいつもの森山からは想像もつかないような怒りの籠ったものだった。
男たちも本気で喧嘩をしようとは思っていなかったらしく、倒れこんだ男を連れて忌々し気に去って行った。

「…さ、帰ろう。」

にこりと笑顔を浮かべる森山に再度手を取られて、寮への道を歩み始めた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


夕飯の時間になっても降りてこない湊を呼びに行った劉に本人が居ない事がバレ、逃走を手伝ったとして裕也は笠松と小堀、更には大坪にまで捕まった。
初めてのお説教部屋から出て来た所に、丁度森山と湊が帰宅した。

その姿に一同は揃って目を丸めたが、黒のウィッグを取って頭を振った湊にやっと事態を飲み込んだようだった。

「湊!」
「お前な、勝手に出ていくなっつってんだろ!」
「流石に籠りっぱなしは、あきちゃいました。」
「誰か連れてけばいいだろ。」
「サポーターを取るな!!」

小堀と笠松の怒涛のお説教ラッシュをうけていると、仕方なさそうに森山がそっと湊を背へ隠した。

「まあまあ。そう言ってやるなよ。湊だってひとりになりたい時だってあるって。」
「森山…」
「誰かと一緒に出てけってあんなに言ってんのに…!」
「お前なあ、ちょっとは気をつかってやれよ。」

溜息交じりに言う森山に、怪訝そうな表情を返す笠松。

「下着買いに出るのに、部の男連れて行くとかどんな罰ゲー、いてぇ!!!」
「黙れこの馬鹿!!」

途端に顔を赤くする笠松に、湊は無意識に入っていた肩の力を抜いた。
別段今日の買い物の中には、見られて困る物は何もない。
買ったものといえば、部屋に置くアロマや靴、新しいノートやペン、自分の普段着ばかりだ。
帰ってくる道すがらその話もしたから、森山だってそれを知っているはず。

けらけらと笑う森山に、ああ、庇われたのだと悟った。

おどける森山へ、笠松の気持ちはシフトチェンジしており。
帰りが遅い湊の代わりにキッチンへ入っていた火神と桜井が、片付かないからと夕飯へと促した。

一同は取りあえずはと話を切り上げて、夕飯を食べにダイニングへと入っていく。
最後尾を歩く森山へ、湊はそっと近寄った。

「由孝さん。」
「ん?」
「ありがとうございます。」
「何の事?」

あくまでもとぼけるつもりらしい森山に、湊は小さく笑った。

「でも、勝手には出てくなよ。いなくなっても気が付かなかったらどうすんだ。」
「すみません。」
「悪いと思ってるなら、次は俺も連れてけな。」

森山の言葉に、顔を見上げるとにんまりとした笑顔と目が合う。

「久しぶりに、二人きりのデートもいいなと思って。」

な、と肯定を促された湊は、笑ってそうですね、と頷いた。

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