学校帰りに寄り道をしてたらもうすっかり暗くなっちゃった。
毎年何にするか悩むんだよなー。
結局毎年渡せずじまいなんだけどさ。
どうしたものかと考えていたらエントランスに雅臣が居た。
いつもなら逃げてしまうけど逃げれなかった。
雅臣は額と口許から血が出てた。
気付いたら雅臣の手を引いて雅臣の部屋に来てた。
こんな状態の雅臣をうちに連れてったら母さんが慌てふためくし。
せっかくの綺麗な顔がーとか何とか言って。
俺がこけて鼻擦りむいた時は笑ってたくせにっ。
「雅臣、喧嘩するなとか言わないけどこんな派手な怪我するなよな」
「うっせ」
今日の雅臣はいつもと様子が違う。
いつもなら真っ先に俺を脅すような事言ったり虐めようとしたりすんのに静かだ。
こっちを見ようともしないし。
それに雅臣がこんな怪我するなんて。
こいつ、格闘技習ってたから強い筈なのに。
「よし…終わり」
「ああ」
相変わらずどこか元気がない雅臣。
軽く部屋を見渡してもおじさんどころかおばさんすら居ない。
おかしい。だって今日は…
「雅臣、誕生日おめでとう」
俺の言葉に驚いたように見ては直ぐに顔を逸らした。
今日は雅臣の誕生日だ。
小さい頃はおばさんとおじさんが盛大な誕生日パーティーをしてたのに何で今年はしてないんだろ。
「なぁ、おじさんとおばさんは?」
「今年もどうせじじいは仕事でばばあは今頃どっかの海外を満喫してる」
小さな声なのに静かすぎる大きな部屋に十分響いた。
今年もって、いつから一人の誕生日迎えてんだ?
いつからか誕生日パーティーの招待状が来なくなった。
雅臣が意地悪して俺に出してないだけだと思ったけど、もしかしてあの日から?
あの日から一人ぼっちなのか?
「これ、雅臣に」
鞄から綺麗にラッピングされた袋を雅臣に差し出した。
今まで、雅臣に虐められるのが怖くて渡せなかった。
今は何でちゃんとおめでとうって言わなかったのか後悔してる。
何で毎年ちゃんとプレゼントを用意してたのに渡せなかったんだろ。
「……何だこれ」
「雅臣の好きなもんとか分かんなかったんだから仕方ないだろっ」
散々悩んだ結果、今回は派手なボールペンを買った。
先っぽに派手な羽根がついてる変なやつ。
面白かったから買ったけど雅臣は喜ばないか。
案の定、適当に投げられたし。
投げなくても良いだろっ。
「あんなもんいらねぇ。代わりに…」
「え?うわっ!」
軽々と肩に担がれてどっかに連れてかれる。
電気を点ける事なく部屋に入るなり柔らかい場所に投げ飛ばされた。
ああ、雅臣の部屋のベッドか。
ベッドふかふかだなぁって思ってたら雅臣が隣に寝転がっていきなり抱き着いてきた。
なっ、何っ…
「……今日だけで良い。何も言わずにここに居ろ」
「へ…?」
理由を聞こうと思ったら直ぐに寝息が聞こえた。
な、何か今日の雅臣は雅臣らしくない。
やっぱ、誕生日祝ってもらえなかったのが寂しかったのかな?
……雅臣に限ってそれはないか。
しっかりと腰に腕を回されてるから離れる事も出来ない。
まぁ今日ぐらい、誕生日ぐらいは雅臣の我儘を聞いてあげよう。
胸元にある頭を抱き寄せて俺もそのまま眠りに就いた。
来年こそはちゃんと喜ぶプレゼントを用意するからな。
「(大樹が居ればそれで良い…)」
2011/07/17
今回は雅臣のターンです。
昔は社長の息子なんで盛大な誕生日パーティーをしてたんですが今はしなくなりました。
実は寂しがり屋な雅臣です。
大樹は毎年変なプレゼントを買っては渡せず自分で使ってます。
だから学校で変な物が好きな子と思われてます(笑)
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