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時 と 瞬 間
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目の前に置かれた赤く光る塊があの"賢者の石"だなんて、誰が信じる事が出来ようか。


だがそれを信じる信じないはともかく、私がここを出るには何やらコレが必要らしい。
どうすればいいのか解らず、爺さんの顔を見上げるが、ただ無表情な顔で見下ろされた。

・・・ヒントなしっすか。そっすか。



何をどうすればいいか解らない私は、歪な赤い塊を握って目を閉じ意識を集中させる。
掌の中の石からとくん、とくんと鼓動を感じる。
何故だか疑問は浮かばなかった。
とたんに脳へ流れてくる情報、感情。


「う、ぐああああああああああああ!!」


激流。
暴力。

流れてくるだなんて生易しいものじゃない。
小さい器に膨大なナニカを無理やり押し込まれる激痛。
もうやめて、と言いたいのにそれを考える事すら許されない。
自分が何考えてるのかも解らない。
脳内を駆け巡る数多の情報。

処理しきれない情報と知識の暴力に、ついに脳がパンクする。


「・・・ッッ!! ・・・!!!」


目の前が赤く染まる。いや、黒かもしれない、白かもしれない。
何も解らない。

ゴポリと耳から音がする。
鼻から血が垂れている。
握った両手の力が制御できず、爪が自分を傷つける。
体中のいたるところから血が噴き出す。
頭が、眼が、鼻の奥が、喉が、焼けるように痛む。
ゴポポ、壮絶な嘔気に襲われ鉄のにおいに噎せ返る。
耐えきれず口から吐いたソレは鉄の味をした真っ赤なソレであった。




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「ん、」
「おぉ、気がついた様だのう」


目の前に真っ黒な爺さん。
ああ、私意味不明な世界で壮絶な意味不明体験してたんだそういえば・・・。

起き上がる力すら出ない。
いたるところが乾いた血や汗や涙でパリパリする。
息を吸う事にすら痛みが伴う。
目をあけるのもだるい。


「苗字名前。君は選ばれた。」
「・・・っは、わけ、わか、ん・・・ないっ」


そんな私の胸の上に、旧き印が浮かび上がる。
こぉ、という風の音と共に修復されていく私の体。


・・・HA?

ちょ、ちょっとまって。
今私、胸の上に浮かんだ丸くて変な模様を見て、え?
旧き印?エルダーサイン?
人間と旧神は旧神の印、燃え上がる五芒星形によってリンクし・・・っていやいや!?
今まで生きてきてそんな言葉、聞いたことある?
聞いたことも見たことも、体感したこともない。



なのに、ナンデ私ハコレヲ知ッテル?



「混乱しておるようじゃのう」
「当たり前、でしょ!どういうことなの!私に何をしたの!!」


何かが、怒りと共に何かが沸き出てくるような感覚。
自分の身に起きた訳の解らない事や、目の前でしれっとしている黒尽くめの爺にいらいらが募っていく。


もう、我慢できない――!


そう感じた瞬間、スッと霧が晴れたように頭が冴える。
自分の"意識"では理解できない言語が思考を駆け巡っていく。
"意思"とは関係なく言語が、数列が術式を形成していく。


「ふんぐるい、むぐるうなふ、くとぅぐあ、ふぉまるはうと、んが、あ・ぐあ、なふるたぐん」


ぐぐ、と握りしめていた掌を眼前に突き出し、爺を見据える。


「いあ・・・いあ!・・・くとぅぐあ!!」

術式を形成し終え、言霊を発言した直後、掌に発現する六亡星の魔方陣、旧き印。
ズン、とあたりに響いた地響きと共に、ごおおお、などという簡素な擬音では表せない程の轟音がとどろく。
それと同時に爺の居た場所には猛烈な火柱、いやもはや火柱とは言い難い。
太く、大きく。まさに炎を纏った巨人の足のようにも思える。



その景色を見、熱を感じた所ではっと我に返る。

私 は 今 何 を し た ?

震える掌を下ろし、"意識"的に自分に問答する。
すると今まで目の前で轟々と立ち上っていた火柱が何事もなかったかのように消え去る。
掌に浮かんでいた旧き印も消えている。
言い知れない疲労感の中、私には困惑と・・・今まで会話をしていた"ヒトを消してしまった"恐怖しか残っていなかった。


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トリップ物のはずなのにまだトリップすら出来ていない\(^q^)/

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