※ヒロトが気持ち悪い



俺がいなくなっても探さないでください。俺は君が大好きです。


そんな訳の分からないメールが届いて以来、ヒロトは俺の前から姿を消した。
前々からヒロトが変人であることは周知の事実であったから、今回のヒロトの奇行を知った人間は大体が放っておけばいいと言った。しかし自分は曲なりにも彼の恋人という立場であったし、なにより彼の身が心配で夜通し彼を探し続けた。

しかしどんなに目の下に隈を刻んで彼を探し続けても結果は得られず、気付けば三年が過ぎていた。


「円堂、もうヒロトを探すのはやめておけ」

久々に顔を合わせた鬼道は、もう何度言われてきたか分からない言葉を口にした。

「うん、もうそれは耳にタコが出来るくらい聞いた」

そう言って笑ったが、目の前に座る鬼道は何も言わずに顔を歪めただけだった。

「心配してくれてありがとな。でも俺、誰に何を言われても止めるつもりはないから」

「……なら、せめて俺に出来ることがあったら、」

「いや、俺一人で大丈夫だよ」

俺一人じゃないと、意味ないんだ。鬼道は訝しげに眉を寄せたが、やっぱりまた「そうか」とだけ言って黙りこんだ。

ごめんな鬼道、でも俺だけじゃなきゃだめなんだよ。

鬼道と分かれてからスーパーに寄り、それから家に帰ってきた俺はいつも通り返信のないメールをヒロトの携帯に送る。決まって同じ文章は、はじめの一文字を打つだけですぐに候補の先頭にやってきた。

メールを送れば、次は買ってきた荷物の整理。ここ三年すぐになくなるシャンプーや石鹸、冷蔵庫の食材たちを補充して、そこでやっとわずかな休息を取る。

この三年間の俺の生活は、俺が一人暮らしを始めてから一週間も経たない頃に失踪したヒロトへのメール、電話、そして捜索、とヒロトを中心に廻っていた。辛いときもあるが、やめる気は毛頭起きなかった。

俺は彼が目の前に現れるまで、こうして彼のためだけに生きていくのだ。

「次は、電話か」

これも習慣となったヒロトへの電話。メール同様常に履歴の先頭にあるヒロトの番号を使う。
どうせ今日も機械的な女の声がおかけの番号は現在電波の〜などと抜かしてそれで終わり、それでいいんだ。しかしそう考えていた俺の耳に、かすかな、それでいて聞き覚えのある着信音が流れ込んできた。

忘れるはずのない、ヒロトの携帯の着信音。

音源はおそらく、俺の家の中、寝室から。音は、しばらく流れたあと、ぷつりと消えた。

俺は携帯を静かに折り畳んで、ポケットに突っ込んだ。

「……あーあ、やっぱり今日も、出なかったなあ。ああそうだ、歯磨き粉、買ってこないとないんだったっけ」

寝室に背を向けたまま、洗面所に立てかけられた二本の歯ブラシを思い出して、俺は大きな独り言を漏らした。


――――――――――

「意味分かんねえよバッキャロウ!」だと思うので補足説明


ヒロトは三年間ずっと円堂の家に隠れている
→自分のことだけを考えて暮らす円堂を毎日見つめるため
→円堂はそれを知ってて、わざとヒロトのために何も知らぬ振りをして生活を送る
→三年経って、そろそろ円堂に会いたくなったヒロトが携帯鳴らして見つけてもらおうとする
→しかし円堂は、ヒロトが自分から姿を見せるまでは絶対に会わないつもりなので放置


こんな感じ。書きたいことに私の力が追いつかないよ!



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