俺は人間が大嫌いだ。他人に媚びへつらうあの態度とか。そんな態度をとるくせ自分は相手よりなにかしらにおいて上にいるのだと錯覚しようとするところとか悲劇の渦中にいるような妄想に嵌るところとか。
普段隣にいる相手が実は自分を疎んでいるのではないかと考えるだけでひどく恐ろしかった。それは、自分は嫌われているのかもしれないという恐怖よりもそんなことを考えられる人間が恐ろしいという気持ちだ。本当にこわい。
そしてそんな腐れた人間を愛するという行為は俺にしてみればまさに苦行。だから俺は父さん以外を愛さない。俺は父さん以外の人間が大嫌いなのだ。

みんながグラウンドでボールを転がしあっている中ひとりぽつんと離れたところに座る。俺にすればこんなことも普通なのだけど、輪をつくって群れたがる人間たちにはちょっとした奇行に見えるだろう。
気にならないと言えば嘘になるが、別段どうしたいわけでもないのでそのまま景色をぼんやりと眺める。見上げた空はひどく青い。
「ヒロト」
セピア調の青が途切れたと思ったら円堂くんが俺の顔をのぞき込んでいた。
「気分悪いのか?」
「違うよ。ただ、ちょっとだけ休憩しようと思って」
そう言ったら円堂くんがにこりと笑って「じゃあ俺も」と隣にぺたりと座り込んだ。
会話もなくただ時間が過ぎる。そんな空気がすこしも嫌だと感じない自分に悲しくなった。相手は自分が嫌いだといった人間だ。そうだ俺は人間が、
「大嫌いだ」
思わず口から飛び出した言葉に、驚いたらしい円堂くんがこちらを見つめていた。その顔を見てまた悲しくなった。なぜ。
「ヒロトは俺が嫌いなのか?」
円堂くんの言葉に息が一瞬とまる感覚がして返事が返せなかった。お互いが視線をそらさない。円堂くんの表情が曇ったように見えたのは気のせいだ。
「俺はヒロトのこと嫌いじゃないけどなあ」
円堂くんが視線をそらす。
「…むしろ大好きだ」

言った途端地面を強く蹴ってグラウンドへ矢の如く円堂くんが駆け出した。そんな彼の背中を見ていたら、案外苦行もいいかもしれないなんて思ったことにほんの少しだけ嬉しくなった。

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うーん、むずかしい



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