リンゴーン、リンゴーン。

「「俺たち幸せになります!」」

純白のタキシードに包まれたヒロトと同じく純白のドレスに包まれた円堂が、またもや純白のカーペットの上を仲良く腕を組んで歩いていく。
その両側に並ぶ見知った人間たちが口々に祝福の言葉を投げかける。
そんな中俺は一人離れたところにぽつんと立っていた。
なんだこれ。わけがわからない。なんでこんなとこに、てかここどこだよ、なんであいつらあんな…。
リンゴーン、リンゴーン。
鐘の音がぐわんぐわんと耳の奥で響く。
「晴矢!」
ヒロトがカーペットから離れたところにいた俺に近づいてくる。その顔は気持ちが悪いほど喜色満面だ。後ろから円堂もヒロトと同じような表情で走ってくる。
「来てくれたんだね、俺たちの結婚式」
なに言ってんだよ、結婚式とか、意味わかんねえって。
「俺とヒロトの結婚式に来てくれてありがとな!」

リンゴーン、リンゴーン。

いやだ、いやだ、



「いやだ!ひろとっ!!」
「うわっ、晴矢!?」




「で、ヒロトと円堂が式を挙げる夢を見て、驚いて目を醒ましたと」
「寝言でヒロト結婚しないで、みたいなこと言ってたよ」
「ううううるせえ黙れよお前ら!!」
最悪だ。
年越しそばを一緒に食べようと寝ていた俺を起こしにきたヒロトに色々恥ずかしい寝言を聞かれてしまった。つーか俺の寝言なんか聞いてる暇があったならはやく起こせよバカ!
「大丈夫だ晴矢。ヒロトの一方的な想いが叶うことはないからな」
「ちょ、風介ひどい」
なんて言いながらヒロトが俺と風介にそばをついでゆく。湯気が赤い椀の縁を濡らしていく様が食欲をそそった。

テレビからは来年への秒読みをする声が聞こえる。
今年もあとすこしで終わってしまうのだと考えると無性に悲しくなった。
「来年は一緒じゃないかもしれない」
思わず声にでた思いはテレビの騒音にかき消されることなくヒロトと風介の耳に届いていたようで、気付けば2人がこちらを見つめていた。
そんな2人の顔を見ていると自分の発言が幼い子供のようで恥ずかしくなった。一体なにを言っているんだ。ずっと一緒にいられる確証なのどこにもないのに。
「ふん、ばかばかしい」
風介の言葉がはじめて痛いと感じた。
「ねえ晴矢」
今度はヒロト。こいつも風介のように辛辣な言葉を投げかけてくるのだろうか。これ以上惨めな気持ちになるのはごめんだ。
この話を終わらせたくて、適当に茶化してしまおうと口を開くより先にヒロトが話し始めた。
「俺たちが来年も一緒にいれるかはわからないけれど、俺はまたこうやってみんなで過ごしたいと思ってる」
それじゃダメかな、と言ってにっこりと笑うヒロトに目頭があつくなった。風介の言うとおり、こんなこと考えるだけばかばかしいのだ。

「…じゃあ仕方ないから一緒にいてやる」
涙は零れなかったけど、声が震えてて笑えた。

きっと来年も俺は幸せ者だ。


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それでは、みなさまよいお年を!(これが言いたかった)



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