※ちょこっとぬるい流血、べろちゅー表現あり
※「心知らず」の続き


一週間前、俺はとうとう円堂くんと恋人同士になった。
告白してきたのは円堂くんだ。告白するときにそわそわと落ち着かなげに服の裾を握ったり離したりする様はすごくかわいかった。「ヒロトの流星ブレードを俺のゴールにいれてくれ!」と真っ赤な顔で叫ばれたときは血管が数本ブレイクされた。主に鼻の毛細血管だった気がする(ちなみに理性の糸は今世紀最大の頑張りを見せた)。

そんなこんなで恋人になって一週間。俺たちは未だに手を繋ぐどころ止まりだ。
俺だって男だし(いや円堂くんもだけど)、そろそろ次のステップにいきたい。贅沢を言うと本気で円堂くんのゴールに俺の流星ブレードをいれたいのだがそんなところまでばく進したらウブな円堂くんがどうなってしまうかわからない。だから少しずつでいい、せめてキスまでは!
そんな願望(not欲望)を神様が汲み取ってくれたのか、昨日の夜に円堂くんから明日遊ばないかとメールがきた。ありがとう神様!

そして今、そんなよくぼ、あっまちがった、願望を胸に秘め、俺は今円堂くんと河川敷でボールを蹴り合っていた。
二人で色んな場所をまわったあと、サッカーをやろうと円堂くんが言い出して今に至っている。あたりはもう真っ暗で、風も冷たくなってきた。そろそろ帰らなければならない。
結局、俺の願いは叶わずだった。全くもって根性なしだ。

「円堂くん、そろそろ帰ろっか」
「あっ、も、もうちょっとだけ!」

そう言って円堂くんはこちらに近寄ってくると、俺の手をひいて人からは見えないような鉄橋の下のあたりで止まりくるりとこちらを向いた。

「円堂くん?」
「あ、あの、さっ、えっと、おお俺のことは、な…名前でよんでくれないか?」
「え?」

予想外だった。ほんのすこし、ほんのすこしだけ期待した俺の馬鹿。円堂くんが無意識のフラグクラッシャーであることを忘れていたわけではないのに。
しかしこれも大切なステップのひとつだ、気をしっかりもて俺。

「勿論だよ、守」
「!、ヒロトっ」
「まっ!」

守が嬉しそうに俺に飛びついてきたと思った瞬間、ガチンと音をたてて俺と守の歯がぶつかった。え、ちょっとまってこれは。
キスだった。ムードなんてものは当然ない。
そんな事実に浮かれていた俺はそのまま後ろに廃棄されていた自転車などの粗大ゴミをなぎ倒しながら倒れた。普通に痛かったが涙がでないようにこらえた。
そのかわり口の中は血だらけになった。ファーストキスは鉄の味。

「ヒロトッ、大丈夫か!?」

守の口の中も血だらけだった。でも咄嗟に俺が抱き込んだから他にケガはないみたいだ、よかった。


そのあと俺たちは水道で口をすすいで、二人で真っ暗な帰り道をゆっくり歩いた。

「ヒロト、ほんとにごめん」
「それはもうなしだってさっき言ったよ。それに…はじめてキスできたしいいじゃないか」
「…あんなの、キスのうちにはいんないだろ」
うつむく守の顔は見えない。けれど想像はつく。
「守」
「…なんだ?」

「今からがファーストキスってことにしようよ」

返事を待たずにそのまま口付ける。しばらくすると守が俺の服を掴んで軽く引き寄せるのがわかった。
それが嬉しくて、勢いのまま舌をいれる。守の肩がびくりと揺れたけれど拒絶はされなかった。

しばらく続けていたらとんとんと背中を叩かれた。慌てて唇を離したら、荒い息をついた真っ赤な顔の守と目があう。真剣な話、想像していたよりずっとエロかった。

「はっ、はあ、ひ、ろと、はげしい…」
「ごめんね、大丈夫?」
「…っは、らいじょぶ」

慌てて右手を掴んだ。危ない危ない、守を押し倒すところだった。はやく帰らなければ俺の理性が守に押し倒される。

「守、寒いしもう帰ろうか」

手をぎゅっとつなぎなおして促せば、守が手を握りかえしてきた。それだけで前屈みにならなければいけなくなりそうになる。あとすこしで守の家だ、頑張ろう。

「…なあヒロト」
「うん?」
「今日、泊まっていかないか?………つづき、したいんだ」


頑張れなかった。


__________

つっこみどころ満載すぎ

わかりづらいですが、円堂が橋の下にヒロトを連れてきたのはキスをするためでもありました。考えることは一緒だったという隠れたオチ…てないですね



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