イナズマジャパンとして世界に勝ってからヒロトの様子がおかしかった(まあ前々からその片鱗は見せつつあったが)。ため息をついたと思えばぶつぶつとなにかを呟き、いきなり微笑みを浮かべたと思えばまたなにかを呟く。まるで目の前に何者かが存在しているような振る舞いをすることもあった。
何度も病院に連れて行こうとしたが、その度に「大丈夫だよリュウジ。それに今守と将来について話し合ってるところだから後にしてくれないか」と言われた(勿論近くに円堂はいない)。なにも大丈夫じゃなかった。
病院に行こうと言った回数が両手の指では数え切れなくなったときから諦めた。
もうめんどくさかったのでしばらく放置していたある日、遊び(ヒロト曰わく円堂とのデート)から帰ってきたヒロトの第一声は「守がここに泊まりにくることになったよ!」だった。
どこかで頭を打ったのだと信じたかった。
しかし現実とは酷なもので、次の日円堂は大きな荷物を持ってやってきた。まさかと思ってヒロトに問いかけたら「え、何日かって?一週間だよ」と微笑みとともに言われたときは嘔吐しかけた。主に心労で。そのあとなんやかんやで三人で遊んだのだが。
円堂に誘われたので俺も一緒に遊んでいたのだけれど、途中円堂がトイレに行くといって退室した途端ヒロトが変貌した。
「ちょっとリュウジ空気よんでよ。これじゃ俺が守と二人きりでラブラブできないじゃないか。守は優しいから三人で遊んでるけどほんとは二人きりで色々したいんだよ、二人で。まあ簡略化するとセッ「言わせねーよ!」
なんだこいつ公害だ!!あ、今更か!
さっきまでは「リュウジ、ジュースいれてあげるよ」なんて言ってたのになんだこの豹変ぶり。
あまりの態度の変わりように無性に腹が立ったのでムキになって「俺はお前のこと心配してここにいるのに!」と若干脚色して(心配の九割は円堂の貞操)叫んだらヒロトも負けじと言い返して、いつのまにか取っ組み合いの喧嘩にまで発展。

絶対負けるもんか、とヒロトの上にのし掛かったときだった。

「悪い悪い、トイレの場所わかんなくておそくな…っ、た…」
「あ、円堂!聞いてくれよ!ヒロトのやつ…」「…守?」

円堂は顔を赤く染めてこちらを見つめていた。わなわなと震える唇が紡いだのは宇宙語だったような気さえした。

「ごごごめん邪魔した!!」
そう叫んで部屋を飛び出た円堂の背中を見送ってからはや3日。

円堂。

俺は今、ヒロトと共に精神科に来ています。



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