―――数分後… 「見つかったかな…」 (シュー…、ガサガサ…) 「あ」 暫く洗面所のドアに耳をそばだてていると、殺虫剤と袋の音が耳に届き、名前は小さく声を上げた。 (ガラ……) 「ヅラ、」 「ん?ん?」 「上だ」 「?おぉ、高杉。あれ、そこお前の部屋じゃなくて苗字さんの…」 「ちィとな」 「え、ヅラくん?」 微かに聴こえる高杉と桂の声。 桂の声は小さく、彼等はベランダと外で会話している事が分かる。 「そこに居んならこれ、ついでに捨てとけ」 (ファサ…) 「袋…って、ぬぉ!?」 (ピシャン) 「こら!高杉!!何渡すんだ貴様ァァァ!!」 高杉は、退治した“Gの棺”ならぬ袋を、ゴミ捨て場付近に居た桂に渡した。(落とした) 閉めた窓の向こうから小さく聴こえるものは当然無視。 (コン、) 「終わったぜ?」 「今のってヅラくん?」 「あァ」 「じゃあ、ヅラくんに…」 「捨てさせた。とりあえず出てこい。もう居ねーから」 「う…………」 そう言われても彼が居る所へ堂々と出れる訳もない。 「お礼があったよなァ?」 「〜〜っ」 やはり高杉に頼まない方が良かったのか―― ほんの一瞬そう感じたのだが、お陰で助かったのは紛れもない事実。 名前は小さく一息吐き立ち上がると、ドアノブに手を掛けた。 (ガチャ――…) 「―――ぁ…」 「……………」 ゆっくり出ると、目前に高杉が居たのだが―――その姿に、名前の喉からは小さな声が漏れる。 名前の瞳に映る彼は腕を組んで背を向けており、ドアが開いたのが分かっても、名前が声を出しても、一度も振り向きはしなかった。 「た、高杉くん……」 「さっさと着替えろ。風邪引くと面倒だ」 よく見れば、彼は着ていたのであろう上着は脱いでいて、この部屋中も暖かい。 「……もしかして…暖房点けてくれてたの?」 「その格好で何十分居たんだか知らねーが、今が冬じゃなくても確実に冷えんだろ」 何時の間に点けたのか、彼は名前の為に暖房を入れてくれていたようだ。 普通なら暖房等点ける必要のない季節だが、風呂上がりに冷えてしまった身体にはとても嬉しい暖かさ。 「―――…ありがとう。でもあの…お礼、は………」 先程高杉に言われた“お礼”をすべきか、背中に問う名前。 すると、クク、と何時ものように笑われた。 「お前、本気にしてたのか」 「え!冗談!?」 「見てほしいなら見てやってもいいが…」 「いや!大丈夫ですっ!着替えてきます!!」 高杉の首が左の方へ向きかけたので、名前は慌てて止めを入れる。 彼の顔が戻ったのを確認すると、タンスから着替えを取り出し、洗面所に戻って着替えをした。 . [章割に戻る] |