電話越しに高杉の声が聴こえている事に、名前は一人冷や汗を流す。 “どうしよ…!どうする名前…!?” 『オイ、名前』 「ああああ、も、もしもしもしもし!」 『“もし”が多い。…で、どうした?』 出て早々突っ込まれたが、彼の声色に落ち着きを取り戻し、名前は再度口を開いた。 「えっと、あの、ね……」 『何だ、早く言え』 「はい、すいません!」 “さっきの事は今はナシにして、とりあえずお願いしてみよう…” 「えと…へ、へへ、部屋、に…来て、もらえま、せんか?」 『………別に構わねェが、理由は』 了承は得たものの、当然その理由を聞かれ名前はゴクリと唾を飲む。 「で、出ちゃったの…」 『何が』 「ゴ…ゴゴ、ゴ…ゴ……あぁ!言いたくもない…!えぇとっ、」 『―――分かった』 (ツー、ツー、ツー…) 「え?あああれ…?」 彼の一言が聴こえたかと思えば既に電話は切れ、代わりに電子音が鳴っていた。 「……分かってくれた!?」 言わんとしていた事が理解できた上での“分かった”なのか。 名前は、彼の優れた理解力に一人驚き声を上げていた。 ** (ガチャ) 名前の部屋に入った高杉は辺りを見回す。 だが、当然彼女の姿を捕らえる事は出来ず、眉を顰めた。 「オイ」 「あ、高杉くん!来てくれたの?」 呼び掛けてみれば、洗面所の方から声が聴こえ、高杉は其方へと足を進める。 「お前は何してんだ」 「いや、あの実は――…」 ドア越しにある高杉の声がすぐ傍にあると分かった名前は、これまでの経緯と、今の自らの姿まで正直に話した。 あまりにも正直に言い過ぎた為か、高杉は喉の奥をクク、と鳴らす。 「正直なのは結構な事だが、テメーの裸まで暴露するたァな」 「っ!!!!タ、タオルは巻いてるよ!!」 「こりゃあ、退治した礼に見せてもらうしかあるめェ」 「え゛っ!!?や!それはちょっとムリ…!!」 「殺虫剤あんのか?」 「あ、それなら下駄箱のとこに…」 「あと袋」 「袋はゴミ箱の横の棚に…って、さっきの聴いてる!?」 名前の言葉を聞き流しながら、高杉は殺虫剤と袋を手にし、彼女の言う“G”を探し始めた。 . [章割に戻る] |