―――――…


「……………」


「……………」


ベッドの上で向かい合うように座り、少しの間、会話は交わさずに居た名前と高杉。



「っ、」

「…………」


名前が指で涙を拭おうとしたのを見、高杉は机に置いてあったティッシュを取ると、無言で彼女の顔に当てる。



「、ありがとう……痛…っ」


受け取ったティッシュで涙を拭き、鼻を押さえる彼女の額に、高杉は自らの指をピシッと弾かせた。



「ブサイク」

「…っう……」


「ククッ…。部屋戻んな」

「え……?」


女子に言うべきではない一言を言い放った高杉はベッドを降りる。
そしてぽかんと口を開けている名前に対し、口許を吊り上げながら振り返った。


「腫れてんぞ」

「―――あ……」


言われ、名前が鏡を見ると、其処に映る自らの目は赤く腫れている。
彼曰く、“部屋で休め”という事らしい。


眉間に皺を寄せる彼女に、フ、と笑い、高杉がドアを開けようとした時―――…



(ガチャ…)



「おぉ、高杉」

「…………」

「?あ、桂く、ん…!?」


先にドアが開き、入ってきたのは桂だった。
瞬間、高杉の顔付きが一気に変わったことに名前は気付いていない。



「苗字さん、大丈夫か?目が少し腫れているが…」

「あ、うん!平気」

「――つか、テメーが大丈夫か」


桂の問いに、名前はこくりと頷く。
心配した桂に対し、名前の代わりに高杉が問い返した理由は、桂の姿にある。



「桂くん…どうしたの?それ…」

「これか?ちょっと偵察をな」

「何のだ…」


「苗字さんの捜していた犯人の」


彼は白い生物もとい、エリザベスとお揃い?の着ぐるみを着ながら普通に話している桂。
偵察をするにしても、誰がどう見ても怪しいのだが。



「あ、それなら、解決したの」

「そうなのか?」

「うん…さっきね」


「そうか。なら良かった」


どうやら、桂は名前の為に協力してくれていたらしく、彼女の言葉に安心すると、眉を下げた。



「ありがとう……心配してくれて」

「いや、大した事にならなくて何よりだ」

「桂くんは優しいね」

「…………」


「何を言ってる、一番優しいのは―――」


(ガチャ)



「ん?あら、久々の組み合わせ」


桂が微笑み、高杉を見ながら言いかけたその時、再びドアが開かれ、今度は銀八が入ってきた。
そして桂を見た銀八も、一瞬眉がぴくりと動く。


「銀ちゃん」

「お疲れ名前。つかお前、何その格好」

「見れば分かるでしょう先生」

「うん。お前がバカということはな」

「テメーも人の事言えねェだろ」

「コラ、高杉!先生に向かって“テメー”はダメよ?」


随分とスムーズに交わされる三人の会話。
名前はそれを見ながら、ふと、ある疑問を抱いた。



「あの〜……」


「「「?」」」

「!あ、えと……」


声を掛けると、三人が同時に振り向き、名前は小さく肩を跳ね上がらせる。
先程から妙に息の合った三人の姿。



「どした?」


「いや…仲いいな〜って」


「俺達がか?」

「うん……」

「どこがだ」

「何か、雰囲気が…」


名前の言葉に、高杉は眉を顰めるが、銀八はニッ、と笑った。



「仲良くはないよ?ただ、俺はコイツらの事よ〜く知ってるけどね」

「?」




「昔、俺ん所で暮らしてたから」


「まぁ…」

「……………」



「え――…えぇ!?」


銀八の口から吐き出された彼等の関係。名前は目を丸くし、その口は半開き。
桂はぽりぽりと頬を掻き、高杉は嫌そうに眉を顰める。



騒動解決後に知ったこの三人の新密度――――。





〈5限に続く...〉

2010.10.24

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