「銀ちゃん……あ、」


「名前、ありがとな」

「う、うん」

「…………」


入ってきたのは銀八―――と、少し後ろに先程の女生徒。
高杉は銀八を見た後、彼女へと鋭い視線を向けた。



「…!」


「……銀八、そういうことか」

「え…?」


「……そ。そういうこと」


高杉と銀八の会話についていけない名前達。
高杉は椅子から立ち上がり、女生徒の方へ近付いた。



「テメーがなァ?」

「……………」

「一体何がしたかったんだ」


俯く彼女の頭上に降りる、高杉の低い声。それは静かながらも室内中にしっかりと響く。



「た、高杉くん…待って」

「何だ」

「この子を責めないで…」

「責めるつもりはねェ。だが…気に入らねェのも事実だ」


名前の止めに、高杉は彼女へは視線を送らず答えた。その声色に女生徒は顔が上げられないまま、震える声を出す。


「…っご、ごめんなさ、い……」



「俺に謝んな」

「え………?」


「嫌な思いしたのは俺じゃねェよ」


言いながら高杉が見ているのは名前。

女生徒も其方へと視線を移すと、ゆっくり名前に近付き、目前に立った。



「―――…」



「ごめんなさい…っ」


「ううん…もういいから…ね?」



「今回の事はまぁ、ここまで知ってんのはほとんど居ねェし、大した問題にはなんねーからさ」


「…………」

「…………」


相変わらずの重い空気。
銀八は女生徒の肩にポン、と手を置くと、緩く口角を上げた。



「とりあえず写真の事知っちゃった写真部ん所に行って、話丸めてくっから」

「丸めるって…?」

「俺が高杉に、“名前の部屋に行って、漫画借りてきてほしい”って頼んだって」

「ま、漫画って……そんなアバウトなので大丈夫なの?」

「あ、名前ちゃん俺を見くびってる?銀さんこういうの上手いのよ?」

「銀ちゃん……。あ、喧嘩した人達は?」

「あァ、そこは大丈夫だ。二回も負けちゃあ、もう恥ずかしくて何も出来ないだろうから。なァ高杉」

「知るかよ」

「だから心配しなくて大丈夫よ名前」

「いや…“だから”って、繋がってないけど」


銀八の言葉により、少しずつその場は和み、名前は小さく安堵の息を吐く。



「じゃ、行ってくっから」

「あ、うん…」

「あの…本当にごめんなさい…」

「ううん。気にしないで」

「……………」


再度深く頭を下げた女生徒に、名前は小さく首を振り、柔らかく微笑んだ。
銀八はそれを横目で見やり口許を上げると、女生徒を連れて医務室を出て行く。






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