−4限目−
【悩む前に会話をすべし】





―――生徒は皆、教室に入り、今この廊下に居るのは名前と沖田だけだった。



「―――教室、行きやしょう」


「沖田くん……」



「…俺が名前を好きな事は、本気ですぜ」


高杉が見えなくなった後、ゆっくり離れた沖田。
名前は突然の告白に目を見開く。



「す、好き…!?」

「はい」

「…………」


「それから、俺の事は、総悟って呼んで下せェ」

「総悟?」

「そうでさァ。マヨラーだけ名前呼びなんてありえねーです」

「は、はぁ…」

「返事は待ちますんで、ゆっくり考えて下さい。さ、行きやしょう」

「―――う、うん…」


沖田はニコリと微笑むと、教室への足を進め、名前も、サラリと進んだ今の状況をどう受け止めたらいいか分からないまま、それについて行った。




**






「うるせーんだよ!ゴリラァァァ!!!」


(ドカァァァン…!!!)

「ギャァァァ!!!」



「私の酢昆布ドコ隠したアルか!!?」

「隠してねーよ!!」


教室に着くと、相変わらずの騒がしさで、名前は少しばかり安心した。
が、教室を見渡しても、自らの席の方へ視線を移しても、名前が捜す人物の姿は無い。



「――――…」


「苗字!」

「!トシ…」


「どこ行ってたんだよ。トイレ行くっつって40分以上も…」

「ご、ごめん…ちょっとサボっちゃった…」

「マヨラー、邪魔でさァ。今すぐ消えなせェ」

「何だとォォォ!!?」

「……………」


名前は、勃発しそうな土方と沖田の争いから逃れるため、そろそろと自らの席へと移動した。



(ガタン……)


「ふぅ……」

「どうしたの?」

「ううん…何でも」


席に着き、山崎の問いに適当に答えた名前は、右隣を見つめる。
山崎はそんな彼女の様子に首を傾げていた。




「うーい、座れー」


暫くし、何時ものように頭を掻きながら、気怠く教室へ入ってきた銀八。


だが、一つ違う所が――――…



「つか何でTシャツなんだアンタ!!」

「どんだけ主張してんだ!!」


白衣こそ着ているが、その中はYシャツではなく、“糖分”と書かれたTシャツだった。



「いいんだよ。明日休みなんだから」

「気が早いわァァァ!!」

「何を着てても銀さんは銀さんなんだからいいのよ!!」

「あー、一旦そこのメガネ二人黙ってくれる?さっさと終わらせたいから」

「本当にアンタ教師かよ………」


フライングで休日気分な駄目教師。
新八の言葉は、今このクラス全員(約一名除く)が思っているだろう。




**





適当過ぎるHRが終わり、寮や部活へ各々解散する。
名前は席を立ち鞄を肩に掛けながら、再度右隣に視線を落とした。



“結局来なかったな…”


「なんて、いつもそうなんだっけ……」



「名前ー、大丈夫アルか?」

「え?」


一人、ぽつりと呟いていると、神楽が来、先程から暗い表情を浮かべていた名前を心配し、顔を覗き込む。



「何か元気ないヨ」

「そ、そう?大丈夫だよ!元気元気」

「酢昆布食べるアルか?これ食べたらもっと元気になるネ!名前には特別サービスするアル!」


「…神楽ちゃん――――…ありがとう…!」

「うォッ!」


今の名前にとって、神楽の存在はとても心和むものだった。
彼女の優しさが胸に染みた名前は、今回は逆転し、自ら彼女に抱き付いた。



「もー、神楽ちゃん大好き!」

「私もネ!名前大好きアル!」




「何やってんだ?」

「さァ……」

「いいな………」


此処に友情愛を深める女生徒が二人。
それを見ていた数名(+担任一人)は、神楽を羨ましがったり首を傾げたり、それぞれの反応をしていた。






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