「あの〜」 「?」 屋上のドアに手を掛けた瞬間、突然声を掛けられ、階段の途中で立ち止まり振り返ると、名前の知らない男子生徒二人が下から上がってきた。 「苗字名前さんだよね?」 「え…?は、はぁ…」 「ちょっと聞きたい事あるんだけど」 「…何ですか?」 顔も知らない生徒の口から出てきた自らの名前。 名前の足には無意識の内に力が入る。 「夜中、あの高杉が、君の部屋に行ったって本当?」 「!は…?何言って……」 さらりと問われた言葉に、流石に驚きが隠せない名前は目を見開く。 「これ」 言いながら名前の前に差し出されたのは、昨晩、名前のベランダへと高杉が移った瞬間の写真一枚。 「な、何、それ……」 「これさ、うちの写真部に置いてあったんだよね」 「……………」 「苗字さんの部屋って、手違いで男子寮になったんでしょ?」 「夜中に男子が女子の部屋に………しかも“あの”高杉晋助が」 態とらしく写真を見ながら言う写真部の生徒。 名前は俯き、ぎゅ、と拳を握る。 「……………」 「何してたの?二人で」 「……………」 「あー、言えないような事だっりして」 「まぁ言えないか。相手は高杉だもんなァ」 「―――…い」 「ん?」 「五月蝿い!!!」 「「へ……?」」 俯き黙っていた名前が急に声を荒げたので、生徒達は呆気にとられた。 制止の言葉をかけようとしても、名前は止まらない。 「何なのよ…!いきなりズイズイと!!アンタ達誰!?」 「あ、あの…」 「貸して!」 「あ!」 「誰が撮ったんだか知らないけど、こんな事するなんて、パパラッチかよ!何、私たちは芸能人!?」 「いや、でも……」 「朝置いてあったんだよ……」 名前の勢いに押され気味の生徒達が顔を引きつらせていると、突然屋上のドアが開き、頭上から低い声が降ってくる。 「何してんだテメーら」 「!!!」 名前の後ろから聴こえた声。男子生徒達はその姿を見るやいなや、冷や汗を流し始めた。 「女一人に群がるたァ、面白ェ」 「高杉くん…」 「高杉、さん……」 「いや…これは〜…」 「随分と楽しそうだなァ?俺も交ぜちゃくれねーか?」 「ひ、ひィィィ!!!」 言い訳をしようとした男子生徒だったが、高杉に片口角を吊り上げながら見下ろされ、怯んだのか、男子生徒達はパタパタと逃げていった。 「……………」 「あの……」 「来い」 「あ、」 逃げた男子達が見えなくなると、名前の手を引き、階段を上がる高杉。 その背中を見、先程の怒りが徐々に消えていく名前は、静かに口許を緩めていた。 . [章割に戻る] |