“あれ?高杉くん居ない…” 班ごとに掃除場所へと移動し、各々掃除を始める中、一緒に移動していた筈の高杉が居ない事に気付いた名前。 「いつの間に……」 しっかり教室に来たかと思えば、移動中に姿を消した彼。 名前が心中で苦笑いを零していると、後ろで雑巾がけをしていた土方に声を掛けられた。 「苗字、ちょっといいか?」 「う、うん」 「朝の続き……」 「あ…ごめんね、ビックリさせて」 「いや…。けどよ、何で高杉がお前の部屋に居たんだよ?」 彼の問いに名前は持っていた箒へと視線を落とし、掃き始める。 「………じ、実はさ、出たのよ」 「出たって…?」 「“G”が」 「“G”って……もしかしてゴ「あー!!言わないでっ!!!まじでやめて、まじで!!」 名前が言う“G”を頭で考えた土方は、思い付いたように言おうとしたのだが、それは彼女の声によりかき消された。 「わ、分かったから落ち着け…!それで?」 「…分かるでしょ?取ってもらったの」 「いや、そりゃ分かったけどよ、朝まで居たのはおかしくねーか?」 「だから、目覚めちゃったから、その後も一緒に話してたの」 「……本当か?」 彼女の言葉が妙に引っ掛かり疑問が消えない土方は、しつこく咎める。 そのあまりにもしつこい彼に、名前は顔を引きつらせた。 「な、何よ…。やだ、もしかしてトシって疑い深い人?」 「そ、そういうわけじゃ…」 “高杉だから信用出来ねーんだよ…!” (ヴー、ヴー) 土方が心中で零していると、名前の携帯のバイブが鳴り響いた。 「あ、ごめん」 「おう…」 「………………」 「どうした?」 携帯を開くなり、数回瞬きをする名前に、土方は首を傾げた。 名前は土方を見、緩く口角を上げると、パタンと携帯を閉じる。 「えーと、ちょっとトイレ行かして」 「あ、あァ。…?」 彼女の表情に引っ掛かりを覚えたが、トイレと言われてしまえば黙って見送るしかない。 「チッ………」 土方は素早く立ち去った彼女の背中を見ながら、モヤモヤした気持ちを掃除へぶつけるしかなかった。 ** “トシ……色々嘘ついてごめん” 一方、名前は心中で土方に謝りながら、ある場所へと向かっている。 先ほど彼女が瞬きをしていた理由、それは――――… 「……指令だよね、これ」 携帯を開き、先程届いていたメールを再度確認中。 道理で見当たらない筈だ。と、妙に納得する名前の足は、土方への謝罪の気持ちがありながらも何処か軽快だった。 . [章割に戻る] |