―――!


小走りだった為か、教室へと入ってきた誰かに、ドン、とぶつかってしまった名前。



「あ、ごめん」


「どうしたんですかィ?名前」


「え…?」



“今、名前って言った…?”



ぶつかったのは沖田だったのだが、彼は何故か名前の事を、苗字ではなく名前で呼んでいた。
名前は、ぽかんと口を開いたまま彼を見詰める。



「センセー、あんま名前のことイジメねーで下せェ」

「コラー、遅ェぞ剣バカトリオー」

「すいませーん」


後ろから続いて近藤と土方も教室に入り、土方は名前をちらりと見た後、高杉へと視線を移した。


「――高杉…アイツ、来てたのか」

「こりゃ話の続きが出来ますねィ」

「ふ、二人とも、ここではやめてね…!」


何となく、否、かなりピリピリした空気の二人を必死に宥める名前。



「フン……」


ある程度の距離から土方と沖田の視線に気付いた高杉は、其方を見、鼻で笑う。



「君達、先生無視すんのやめようかァ。寂しいからね?ハイ、座りなさい?」

「……………」

「名前、また後で」

「え、あ、はい…」



「お妙さァァァ…」

「近づくなっつってんだろゴリラァァァ!!!」

(ドカッ!!!)

「グハッ…!!!」


朝から騒がしいこのクラス。
そして土方と沖田は席に着いた後も、高杉へ警戒の眼差しを向け続けた。

名前は落ち着かない状況に、ぐったりとしながら自らの席に着く。




**





「あ、今日は大掃除すっぞー」

「マジ!?」

「おーマジマジ」

「いきなりすぎだろ!」

「仕方ねェだろー。このクラスきったねーって校長から注意されたんだよ」

突然の掃除指令にクラス中がざわつき始める。


「一番汚してんのはアンタだろ!!」


メガネくんこと、新八が突っ込むのも当然。
このクラスの雑誌や菓子屑等の塵は、大抵銀八の仕業である。


「文句言わないの。男だろー?」

「そういう問題じゃねーよ!!!」

「ハイハイ、班ごとに移動しなさーい」


彼の正しい突っ込みをさらりと流し、銀八が気怠く掛け声をかけると、皆は席を立ち、文句を言いながら掃除の準備に取り掛かった。






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