「名前、おはよーアル!」

「おはよー」

「昨日はあの環境でゆっくり眠れた?」


食堂に着き、入口で合流した神楽とお妙と一緒に朝食を囲む名前。

お妙に問われ、名前は飲みかけたコップをコトリと置く。


「まぁ…何とかね」


「もし寝れない時はこっそり私の部屋に来るヨロシ」

「そうよ。間違えたのは学校なんだから」


「うん…ありがと…うっ!?」


「おーう、おはようさん」


二人の言葉に微笑んでいると、突然頭上に重みを感じた名前。何事かと上を見上げれば、銀八が頭に顎を乗せていた。



「銀ちゃん何やってるネ!!さっさと離れるアル!」

「ちょ、神楽ちゃん!何よその言い方!」

「というか、銀ちゃん…」


「名前ちゃ〜ん、神楽ちゃんが恐いよォ」

「近い………」


神楽に怒鳴られ、名前の肩に手を置きながら彼女の顔の後ろに隠れる銀八。



(ゴンッ!!)


「先生?名前ちゃんが困ってるの。いい加減にして下さいね?」

「ってェ〜…」

「それから、起きるの遅すぎじゃありません?」


朝からふざけている教師の頭上に、お妙の鉄拳炸裂。


「いやァ、愛しの名前の事考えてたらドキドキして眠れなかっ…ゴフッ!!」

「寝言は寝てから言えこの変態教師。はい、別の所に座って下さいね」


もう一発お妙が鉄拳を飛ばすと、彼女は言いながら銀八をズルズルと別の場所へ連れて行った。



「……………」


「名前、少し目腫れてるネ」

「え?」

「ものもらいでも出来たアルか?」


名前の顔を心配そうに覗き込む神楽。


「あ、これは…ちょっとね。もしかしたら睡眠が足りなかったのかも。大丈夫」

「夜更かしはダメアルよ。美容の大敵ネ」

「うん…ありがと」



夜中泣いたからとは言えず、名前は苦笑いを零し、何とかその場をやり過ごした。




**






「おはよう、山崎くん」

「あ、苗字さん、おは…よう……」


教室に入り、自らの席に鞄を置きながら山崎に挨拶をした名前。
その笑顔は、先程のお妙の様に黒く。



「もう少し上手く嘘吐いてほしかったのになー?」

「ご、ごめん…つい……」

「…なんて、冗談。山崎くん嘘下手そうだもんね」

「す、すいません…」


冗談と言われたが、その後に続いた名前の言葉に山崎は落ち込みを隠せない。
名前はそんな彼にニコリと微笑むと、背中を軽く叩いた。


「落ち込まないでよ。嘘だから」

「うん…。で、大丈夫だったの?」

「高杉くん?」

「うん……」


「大丈夫。全然悪い人じゃないし、むしろ――…」


「むしろ?」

「……何でもない」

「?」


言いかけた名前だったが、続きは喉の奥に仕舞い込んだ。



(ガラッ)


「おーい、銀さんの登場だぞー。だらけてないで席着けアホ共ー」

「アンタが言うなァ!!」

「五月蝿いよメガネくん。銀さんただでさえ低血圧で朝弱いのに、今日は女生徒にパンチ喰らってんだから」

「それは先生が悪いのよ」

「………。ところで剣バカ三人まだ来てねーな。アイツらの分際でこの銀さんのHR遅れるとは…」



(ガラッ)



「!」


「え……」

「あ……」


(ザワッ…)


銀八がぶつぶつ文句を言っていると、突然後ろのドアが開き、一人の生徒が入って来た。



その人物にクラス中がざわつく――――






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