ここから始まるの




小さい頃の夢はお嫁さんやった。今は玉の輿に乗ること。まぁ嫁になりたいと言う点は変わってないから、このまま話を進めます。

何故俺が玉の輿に乗りたいのかと言うと、母親が専業主婦やから。父親がそれなりの高給取りなので、母親は別に仕事せんでも困らんらしい。よって専業主婦。パートもせぇへんし、就職もせぇへん。
これが俺の理想。まぁ早い話が仕事せんでも生きていけるような、そんな暮らしがしたい。愛がなかったら楽しくないと良く聞くけれど、その前に金が無かったら生きていかれない。やから俺は金が好きや。



財前光、十五歳
将来は玉の輿に乗って、専業主婦になる事です。





四月某日、俺は合格圏内だった大阪トップクラスの高校に入学した。特にこれと言って入学したい理由は無かった。いや、それやと誤解を産む。理由は確かにあるにはある。あるんやけど、あまり大声では言えへん。

その理由は、ここの理数科の約半数が医学部、薬学部、歯学部の大学に入るから。ただそれだけ。別に俺が医学部に入りたいとかやない。もし仮に俺がこの学校で、とりあえず好きかどうかは置いといて彼氏が出来たとしよう。勿論理数科の。その彼氏が医学部志望だったとする。
医学部=医者。医者=金持ち。金持ちと結婚=将来安泰。もう分かったと思う。


俺はただ医者とか金持ちになりそうな奴と出会いたいが為に、この学校に入ったのだ。



「めっっっちゃだるい…」


今日は始業式。普段ならサボる俺やけど、今日はサボれへん理由があった。どうやら俺はこの学校にトップの成績で入学してしまったらしい。よって、新入生代表挨拶は俺がやることになってしもうた。非常に面倒臭い。

兄貴に書いて貰った挨拶文を持ち、壇上に上がる。一礼し、一呼吸置いてからつらつらと文を読んだ。読んでいる最中に考えたのは、今日の晩御飯何やろうとかそのようなこと。やから気付かんかった。奥の方から目光らせて絶好の鴨が見とったことに。





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