携帯が新年を迎えたことを告げたその時間に、頭キンキラキンの先輩から絵文字というか、デコメだらけのメールが届いた。
お祝い事大好きなあの人のことだ。時間ピッタリに送れるようにスタンバイしていたのだろう。まったく、可愛い人だ。内容は至ってシンプルで、あけましておめでとうとか、今年もよろしくな!とか書かれていた。
一応返信しなきゃ悪いと思い、メールを送信するも混雑しているためか中々送ることが出来ない。次第にイライラし始めた俺はある行動に移った。

メールが送れないのなら、自分が直接行けば良い。謙也さんのことだ。何人からメールが来るかソワソワして待っているに違いない。寝ている心配はないだろう。
そこから俺の行動は早かった。パジャマの代わりに着ていたスエットはそのままに、最近買ったお気に入りのコートとマフラーを巻く。更に、耳にはヘッドフォンをして家を飛び出した。



謙也さんの家の前につくと、謙也さんの部屋の明かりがまだついていることが分かった。こんな夜中にイヤホンを押すのはご家族の迷惑だろう、と気が引けた俺は携帯を取り出し、謙也さんに電話をする。

…が、繋がらない。そういえば今かなり接続が悪い時間だったな、と思い出す。本当はこんなことはしたくなかったが、仕方なしに謙也さんの部屋の前にある木に登り、ベランダに降りた。

カーテンに仕切られている為、中を見ることは出来ないが確かにそこに謙也さんがいる。俺は、寒いしいつまでもベランダなんかに居たくはないので、窓を叩き中に入れるよう促す。が、窓は一向に開く気配を見せない。痺れを切らした俺は強めに窓を叩いた。

と、次の瞬間勢いよくカーテンが開かれた。窓越しに謙也さんと目が合う。何故か謙也さんは右手にバットを持っていて、俺はようやく泥棒に間違われていたことに気が付いた。


「はぁっ…何や光か…」
「驚かせてすんません」


謙也さんは俺だと分かると安心したのか、カラカラと窓を開け中に入れてくれた。ついでにあったかいお茶も出してくれた。ほんま、いつでも嫁にいけると思う。


「で、こんな夜中にどないしたん?」
「や、一応メール貰たんで」
「あぁ、わざわざおおきにな!でもメールで返事すれば良かったんとちゃう?」
「…今めっちゃ携帯の接続悪いんすわ」
「…なるほど」


謙也さんはそっと俺のコートを剥ぐとハンガーにかけたり、マフラーを綺麗に畳んだりしていた。仕舞いには俺の好物の善哉まで出て来た。用意が良すぎる。

俺は出された善哉を食べながらちらり、と謙也さんを見た。すると謙也さんは満面の笑みを浮かべながらこう言った。


「あけましておめでとう、光。去年もめっちゃ楽しかったけど、今年もいっぱい楽しもうな!」




ハニーハニー、君が愛しい




「こちらこそよろしゅう頼んます、謙也さん。今年も去年と変わらず大好きや」




11/01/01


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