目を覚ますと、白石の顔が目の前にあった。距離にして僅か約3センチ。寝起きなせいもあってか飽和状態の頭で思ったのは(なんや近いなぁ…)とかそんな在り来りなことだった。

その日、俺は眠くてたまらない身体を引きずって学校に来た。理由は簡単。前日に何となく目につき買ったゲームが、あまりにも面白く夜通しやってしまったからだ。
しかし「寝不足だから学校休みたい」なんて親に言える訳もなく。午前の授業は体育もありなんとか持ちこたえたのだが、お昼を食べ膨れた腹に、教師の子守唄のような声。俺の眠気はピークに達した。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。


とりあえず今までのことは思い出した。では次に今自分が置かれている状況を分析してみよう。
時計は5時を回り、既に教室には俺と白石しかいない。今日から試験一週間前に入った訳だから、皆家に帰ったのだろう。そしてやたらと近い白石の顔。


「…あの、白石?」
「…ん?」
「や、なんか、その」


顔を後ろに引いて、白石と距離を取った。あんな近さで話していたら唇が触れ合ってしまう。そんな俺の行動が気に入らなかったのか、白石は眉間にシワを寄せた。


「…なんで離れるん?」
「いや、普通離れるやろ」
「なんでや」
「…近過ぎた、から?」


なんで疑問形やねん。とか言いながら白石は机から身を乗り出し俺に近付いて来る。そして先程寄りも近い距離でこう言った。


「次は襲うで?」
「…は?」
「あんま無防備な顔して寝とったらあかんよ?」


白石の言っている意味はよく分からなかったけれど、唇と唇がくっつく感触だけは理解出来た。



唇に触れた熱


10/12/06

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