「今週晴れるみたいだな」

「いい天気だね」と栄口は窓からの風を受けながら言った。梅雨だけど、晴れるのは嬉しい。大会前の大事な時期にしっかり練習できないのはきついからな。

「そっか」

よかった、と彼は笑った。この笑顔が好きで、愛しくて、守りたくて。守るためにはどうしたらいいのか、とか考える前に、気持ちばかりが膨らんで。

伝えてしまおうか。

友達でいたい。

俺の中では、ずっと葛藤が続いていた。これに答えはあるのだろうか。



***


巣山は携帯サイトで今週の天気を調べて教えてくれた。晴れるって。よかった。

「今日の内野の練習だけど、ランダンやりたいんだよな」
「あー、意外とランダン多いもんね」
「おう」

諦められなかった。諦めてしまえればそれでよかったのに。なのに。言ってしまいたいだなんて心を咎める。俺達はチームメイトで、クラスメイトで、親しい友人だ。

「巣山」
「ん?」
「…ごめんね」
「お、おう?何かしたっけ」
「…ううん、何でもない」

謝罪さえ、届けられない。好きになってごめんなんて、言えない。


***


「国語難しくね?」

ずっと理系だったから、国語は苦手な方だ。文章とか答えが曖昧でよく分からない。数学とかならばばっと答え出るんだけどな。

「うーん…俺にとっては数学のが難しいけどなあ」
「でも栄口数学頑張ってっから最近調子いいよな。俺も国語頑張ろうかな…」

俺の言葉に、栄口が閃いたように言葉をくれた。

「答えをさ、導き出そうとするからいけないんじゃないかな」
「ん」
「数学とは…俺根本的に違うと思う。国語は感受性。読んで、想像して、感じて。答えはたくさんあると思う。でもその中で一番近い…また曖昧になっちゃうな」
「…感じて」
「そもそも巣山妄想しないからそういうのが養われていないんじゃないかな」
「えっ」
「なーんて」

答えは、たくさんあるのかもしれない。

「好きだ」

これは、その中の一つの答え。


***


「好きだ」

真っ正面から告げられて、持っていた教科書を落としてしまった。それを拾おうとしゃがみ、立てなくなった。え、今何て言われた?

「…ごめん」

俺の頭に手を乗せて。巣山は言った。何、何だよごめんって。なんで、謝るの。
足音が聞こえる。教室は騒がしいはずなのに、巣山の足音だけ鼓膜を震わせた。

「っ巣山!!」

精一杯名前を呼ぶ。振り向いた彼を見て、立ち上がり腕を掴んだ。手に力がこもる。

「な、んで…言いっぱなしにすんだよ」
「さか」
「俺の答えも聞いてよ巣山」

巣山は答えない。でも、告げた。

「好き、だ」

ようやく、教室の騒がしさが耳に戻ってきた。


***


栄口、と声にならない言葉。足が少し震えている気がする。夢だろうか、これは長い夢なのだろうか。どうしよう。

「…」

そっと頬に手を添えると、泣きそうな顔で彼は笑った。温かい。夢じゃ、ないのかもしれない。

「好きだよ、巣山」

俺の手の上に、彼のそれが被された。栄口の温度が直に伝わる。

答えが何通りもあるならば、伝えて友達にも戻れるというものもあるんじゃないかって考えたら、もう声が出ていた。恋に正解なんてないのだ、きっと。これは、胸を張って言える、初恋だ。

7.『好き』

「巣山」
「ん」
「き、今日…一緒に帰ろ?」
「お、おう…」
「…」
「今度、2人でどっか行こうな」
「うん!」

(一緒帰るのも2人で遊ぶのも…今までしていたよな…?って教室でいちゃつくな!!)

もう、離さない。



***
巣栄の日2013ということで!一週間かけてのお祝いでした。楽しかった!!おめでとうございます!!ありがとうございます!!巣栄は生きる糧です…
また一年、宜しくお願い致します。ありがとうございました!




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