「おはよう君島」
「はよ!」
じめじめした天候の下に一つの爽やかさ。クラスメイトの栄口はそんな存在だ。いい奴で可愛くて。結構皆がそんな彼を大事に思っているだろう。彼を、というか、いつも一緒にいる野球部の二人を。
「おはよ、君島」
日誌を持って巣山が教室へ入ってくる。今日も渋いな相変わらず。挨拶を交わし、何となく数人で輪を作り会話が始まる。
「巣山少し髪伸びてきたんじゃない?」
「あー…今夜でも頭やっかな」
「巣山の頭、坊主しか見たことないもん。卒アルだって坊主だったし」
「だなー」
巣山は優しく微笑んだ。
「朝のホームルーム始めるぞー」
朝のチャイムが鳴り、担任が入ってくる。席に戻ると「起立」という低音の声が凛と響いた。巣山の声だ。挨拶をし、「着席」の声で椅子に座る。ガタガタとした音が鳴り止むと先生が話を始める。
「なんだかなー」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いたはずだったけど、目の前の工藤の肩が揺れた気がした(本当は君島の俺が工藤の前だったけど、度々振り向いていたら先生に席を変えられた)。
「さっきの、何?」
一時間目の準備をしていたら、工藤が振り返ってきた。俺は「聞こえてたのか」と笑いながら返す。そして話を続けた。
「巣山さ、最初あんなに笑ってたっけ」
「ん?」
「最初坊主でガタイよくて渋くて…なんかすげークールなイメージだったんだけどさ。最近柔らかくなったなって」
ずいぶんと印象は変わった。丸くなった、という言い方はおかしいかもしれないけれど、取っつきにくい雰囲気は全く無い。
「そりゃ、隣にいる奴のせいだろうな」
工藤の言葉に、野球部の席に目を向ける。二人はじゃんけんで勝った人がデコピンをして負けた人が防御する遊びをしてじゃれていた。何なんだあいつら、いちゃつくな。
4.アイツの笑顔が増えたのはあいつのせい
「栄口勝ったのに守ってどうすんだよ」
「え〜だって」
よそでやれ
***
お題を見た瞬間「これは君島のお題だ!!」と思ってしまいました。一組楽しいなあ。
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