好きだ、と思ったのはいつからだったかなんて覚えていない。一緒にいて、話して、楽しくて、安心して。ぼんやり「好きなのかも」と一度口に出したら疑いようもない気持ちに変わって。ただそれだけだった。
「巣山ー」
「ん」
「…シェイク飲みたい」
梅雨に入りじめじめした天候が続く中、食道が、胃が、あの飲み物を求めている。そう伝えると「んー、八点」と言われた。何点満点中だよ。
「じゃあ帰りに寄るか」
「え、いいの!?」
「言っといてなんだよ。俺もチキン食いてえ」
「わーい」
好きだ、と気づいたからなんだ。伝えられない想いだ。伝える気も無いのだけれど。ただいつも通り隣にいて、当たり前に過ごしていられればと思う。居心地がよい、こいつの隣で。
部活も終わり、俺と巣山は早々と着替えて部室を出た。ハンバーガーショップはほんの少し遠い。急いで自転車を漕ぐ。待ってろシェイク!
「いらっしゃいませ」
0円のスマイルをいただき、そしてシェイクを頼む。定番のバニラでしょ!
巣山も隣のレジで会計を済ませていた。人も疎らな店内に腰をおろす。
「部活お疲れ様でした」
ストローに口つけシェイクを啜る。うまい。練習後の疲れた体には甘さがしっとり伝わって良い。
「栄口」
「ん?」
「何味?」
「バニラー」
答えると巣山は背中を丸めて俺のストローを口に含んだ。え、あれ?
「甘いな。サンキュ」
チキン食うか?と問われて一瞬戸惑ったけど、妙な空気になる前に噛みついた。ブラックペッパーが効いていて美味しい。
「ありがと…果物系、苦手だもんね。巣山」
「うん。でも頑張って食うぞ」
「えらい!俺も魚卵頑張ろ…かな…」
普通に会話できているだろうか。ドキドキドキドキ、心臓がうるさい。こんなの、知らない。
2.今までだったら普通にできた事が
「帰るか」
「う、うん」
「数学の課題は明日やろうな」
「忘れてた!!」
何ともない間接キスに、戸惑うなんて
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