「だからさ、お前はどうしたいんだよ」

そんなんどうだっていいよ、なんて言いながらビールを一気に流し込む友人は、泣きそうな顔で笑った。
色々他愛ない話をした。昔話とか、栄口が来なかった同窓会の話とか、色々した。酒も進んで、最近飲んでないって言ってた割にはハイペースで飲んでいく栄口を横目に、俺はメニューを見ていた。
そしたらいきなり「あべぇ」なんて甘い声を出してきて。結構やばいかもって顔を上げれば泣く同級生。問えば好きな人とうまくいっていないらしい。栄口はいつもおてんばなようで落ち着いていた。心配性なくせして変なとこでは冷静で。なんかそういうとこが苦手で、そして好きだった。

上の空で酒を飲む友人に、ジョッキで濡れた手を振り水を飛ばす。

「っつめた!!」
「それ次第、だろ」

どうしたいかなんて、そんな野暮なこと。
好きで好きで、諦められなくて、そんな顔をしている。だから止めない。でも応援とか協力は面倒だからしない。

「…うん」

諦められたら、こんな苦労しないよな。

苦い経験から出そうになった言葉は、ビールと一緒に飲み込んだ。





「何」

暖簾を上げて帰ってきた栄口は、俯いていた。トイレに行ったはずだが、そこで何かあったのだろうか。

「…何でもない」

こいつは頑固だ。優しいけど頑固だ。俺は追及をやめる。俺が何か言って簡単に折れるような奴じゃない。

「何でもないなら」

んな顔すんな。

紙のコースターをくしゃくしゃにして、栄口に投げた。

「…ごめん」
「…」
「あのさ」
「うん」
「…俺、全部話す」
「…」
「そんで駄目だったら、いいや」

すっかり冷めたはんぺんピザを口へ運んだ。少し固い。

「ばーか」

栄口の頬をつまむ。

「ひ、ひひゃ」
「頑張れよ」

顔つきは、大人になっていたのに。触れた頬は、高校時代と同じではんぺんみたいに柔らかかった。



END



***
途中まで書いていたんですが結局使わなかった阿部さんのお話。
阿部くんが誰を好きだったとか、色々ご想像にお任せします。




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