授業用のパワーポイントも作り終わり、少し寝て起きたら栄口が朝飯を作り終わったところだった。
「おはよ。終わったの?」
「一応な」
「お疲れ様」
いい香りだ。栄口のオムレツ美味いんだよな。
「ご飯食べて着替えて…10時には出られるかな」
今日はお互い仕事が休みで、月命日だからゆき子先生…栄口のおふくろさんの墓参りに行く。よく晴れていて、彼女も喜んでいることだろう。お日様がよく似合う女性だった。
「巣山、お線香立ててもらっていい?花やる」
「おう」
新聞紙をガサガサ鳴らしながら花を立てる栄口に目を遣りながら、線香に火をつけて立てた。
二人並んで手を合わせる。
改めて何を話せばよいか、わからなかった。一応近況報告と、栄口は任せてほしいとだけ伝えた。先生は俺らを、どう思っているんだろう。生きていたら止めたかな。それとも応援してくれたかな。
分からない。分からないけどなぜか、先生なら笑って認めてくれるんじゃないかなって思う。真っ直ぐで、綺麗な人だった。
「俺達さ」
「うん」
「大丈夫だよね」
「…うん」
不安なことはたくさんある。男同士だという背徳感から生まれる様々なもの。でもそれでも、今はお互いを信じて歩みたいと思う。願う。
「飯食いに行こうぜ」
「うん!ラーメン食いたい」
「どこ行くか」
「この辺に母さんの好きだった店ある」
「お、いいじゃん」
「餃子が美味いんだよね」
手は繋がない。でも、繋がっている。
「あ、そうだ」
俺は立ち止まって振り返り、もう一度墓に手を合わせた。
「どうしたの?」
「言い忘れてた」
色々あるかもしれない。でも、幸せになりたい。先生の分も生きて、たくさんたくさん幸せになりたい。できたら、こいつと一緒に。
こんなにも、愛しく思える人を生んでくれて、ありがとう。
END
******
これにて完結です。
ありきたりの中に夢を詰め込んで駆け抜けました。
感想などもありがとうございます!とても励みになりました。設定など細かい部分は…色々すみません。
楽しかったです!
ありがとうございました。
201305
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