今日電車で話していた店にしようよ。なんだっけ、女の子が言ってたって店。電話しとく、店の名前分かる?え、しといてくれる?助かる。ありがと。

ざっと言葉を並べて、早めに電話を切られた。栄口とだらだら電話続けるのは嫌いじゃない。むしろ、価値観が似ているようでずれがあるから楽しい。忙しかったのかな。いつもより急いでるような感じがした。

彼はとても純粋だと思う。

待ち合わせより一時間早く家を出た。何となく落ち着かなく、家にいられなかった。栄口が家に来てからは、ベッドで寝ていない。あんなに純粋な彼のことを考えると、自分のやましい気持ちが沸き上がるような気がして寝られなかった。ソファー生活にも慣れた。

「あ」

すやま、とぱっと顔を上げて微笑む栄口。こんなことあったっけな、前にも。初めて会った日だ。

「ごめん、待った?」
「ううん、てかまだ15分前だし。大丈夫だよ」

今日は栄口を待っていたいと思ったのに、駄目だった。こいつも楽しみだったのかな、と考えて苦笑した。全ていい風に捉えて、ゲンキンな奴だ、俺は。

「行くか」
「うん」

待ち合わせ場所に佇む理由もなく、ゆっくりとした歩調で歩き出した。まだ予約の時間までは余裕がある。少しは早めに着いても大丈夫だろう。

「今日も暑いね」

日が暮れたにしても暑い。栄口はシャツの首元をパタパタさせた。焼けていない白さが目に映る。肌、白いんだな。

「だな」
「あ、明日ここの代表の試合あるね」
「おお、甲子園観に行きてーよな。行けないけど」
「ほんとだよねーでも相手も古豪だし…いい試合になりそう」
「おう……あ」

スポーツバーの脇を通り、「明日は甲子園中継流します。応援しましょう」という貼り紙を見つける。昼間っから酒飲みながら甲子園観んのもいいな。

「栄口…明日ここ、行かないか?」
「あ、ごめん…明日ちょっと用事があるんだ」
「…そっか」

そうだ、栄口には栄口の日常がある。俺はそれ以上何も聞かずに歩き出した。




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