「うーん」

仕事の合間に、明後日に控えた教員採用試験一次試験の勉強を進める。楽しんだ分、夜精一杯勉強した。なかなか受からない中で夢を諦めきれないのは、もういない母さんに「先生になりたい」と言ったからかもしれない。でも今は、それだけじゃなかった。

「…」

ココアを口に含む。独特の甘みが口内いっぱいに広がって幸福感に満たされた。
傍にあった手帳を開く。来週、巣山と待ち合わせして飲むことになった。好きだ、と意識してから初めての約束。この気持ちがばれないかどうか不安になる。でも、これからも友人として仲良くしていきたいから。一緒にいれば、だんだん想いが昇華されていくような気がして。
俺はペンを持ち、別の参考書を開く。今は無心にペンを走らせるべきなんだ。俺もあいつも、野球が好きで、社会人で、一緒にいると楽しくて、ただそれだけ。そう思うようにした。

一時間ほど勉強を進め、区切りがよいところで携帯が鳴った。なんだろ。

「あ」

巣山の名前が携帯に表示される。メールだ。

「三日間ありがとうな…って、もう」

律儀にメールくれるとこなんて、すごい。こんなメール一通で嬉しくなる。疲れも吹っ飛んだ。恋するリーマン。何だそれ。

「……こっちこそ、楽しかった…ありがと」

ぼそぼそ呟きながら返信をかちかち打つ。
やる気出てきた。もうちょい頑張ろう。温くなったココアを一気に喉に流し込み、またペンを握った。




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