試合終了のサイレンが鳴る。いい試合だった。観客も皆拍手している。三点差、九回ツーアウトから、代打のタイムリーで二点入れて…ゲームセット。惜しかったな。今年も常連校が甲子園へと勝ち上がった。

「あー…」
「惜しかったな」
「うん、でも…県立校のピッチャー二年だし。主力も何人か残るし来年期待できそう」
「だなー」

フラッシュがたかれるグラウンド。スタンドでは応援団がエール交換を行っている。
一時試合開始だったから今は四時前。飯に誘うには少し早い気もするし、かといってこのまま別れるのも…

「巣山」
「ん?」
「…バッセン行かね?」




観ていたら野球がしたくなったのだと、栄口はバットを選びながら笑った。140kmの機械は一つしか無いから順番待ち。キン、と今日球場で聞いてきた音が響く。今頃負けたチームはどうしているんだろう。新しい一歩を、去る方も残った方も踏み出さなければいけない。意味のない世話を焼いても仕方ないんだけどさ。

「お」

栄口がホームランのプレートに打球を当てた。栄口はもう一発!と言いながらフルスイングしたら空振りだった。球はもう出てこない。20球って早いよな。

「こーたーい」
「おう、ナイバッチ」
「ありがと」

アームから球が出てきて、打ち返す。やっぱ140は速いな。現役じゃもっと飛んでたはずなんだけどなあ。ホームランは打てずに20球終わる。俺はロビーへと戻った。

「お疲れ様」

頬に冷たさを感じて前を向けば、悪戯っぽく笑う栄口。

「ホームランの景品、ジュース二本だったから」

コーヒーでいい?と言いながら腰をおろす。礼を述べ、その隣に座った。アイスコーヒーは微糖だったけど、疲れた体には程よい甘さだった。

「栄口」
「ん」
「…何でもない」
「…ん」

その後は回転寿司へ行き、各々帰路へついた。また明日からいつも通りの一週間が始まる。




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