「あ」

見知った坊主を球場で見かける。昨日別れた後に連絡は取らなかった。何となく3日連続会うのは躊躇われたからだ。晴れの日曜日、夏の甲子園予選決勝。常連と、いつも上位には入るものの一度しか聖地へ行ったことのない県立校の対決。自身も県立出身だから、肩入れしてしまうのは仕方がない。

「すや、ま」
「、あ」

名を呼ぶと、彼は振り向き俺を見て笑った。

「いるんじゃないかなーって思ってたら、いた」
「うん。あ、昨日は楽しかった。ありがとね」
「おう」

ばらばらに来たといっても、互いに一人で来ていて。「じゃあ」なんて別れる理由も無くて。結局二人並んで歩き、よさそうな席に座った。太陽が照りつけて、熱い。暑い。

「巣山はどっちか応援してるの?」
「ああ、やっぱ県立の星だな。俺も県立だったからなあ」
「俺も一緒だ」

爽やかに笑う坊主の笑顔には、何となくその頃の面影が残っているような気がした。当時からきっと、優しくて男前で、しっかりした頼れる人だっただろう。今、俺がこの男に対して思う印象は、長く培ってきたようなそんな気がする。

「ずるいなー」
「え?」
「…いや」

想いを封じようと思う度に、彼のいいところが浮かんできて。試合開始のサイレンを聞きながら、せめてこの想いを溢さないようにしようと強く思った。




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