頭がぼーっとする。握られた右手が熱い。夏だから?暑いから?いや、そこには認めたくない何かが隠れていることに気づいていた。

「結構混んでるね」
「だなー」

中に入り、一塁側の中程に二人で腰かける。椅子も日光を浴びて温度を上げていた。外野から観るのはもちろん楽しい。でも、内野でゆっくり話しながら観るのもいいんじゃないかってことで今日は内野に来た。

「そろそろスタメン出るかな」
「あ、じゃあビール一杯賭けて予想な」
「お、乗った乗った」

スタメン予想を携帯に打ち、その画面と巣山とバックスクリーンを順に見つめ、発表を待つ。

“一番、セカンド…”

相変わらず綺麗な声色のウグイス嬢のアナウンスに耳を澄ます。名前が読み上げられる度に、ライトスタンドは盛り上がりを見せていた。

「18人中14人」
「俺も」

解答と照らし合わせていくと、巣山と同じ正答率だった。なんだ。賭けたビールは、引き分けということで互いにはじめの一杯奢り合うことにした。なんかこういうの、大人みたいだなって思う。高校時代、何度かこの座席の辺りで試合を観た。それは相手校の視察であったり、ただの野球観戦であったり。でも今とは違った。ビールも飲めなかったし、まさか最近知り合った人とここに来るとは思っていなかった。

「なんかなー」
「ん?」
「…いや」

もう、認めざるを得ない気がする。巣山のことを、好きだと気づいたのはいつからだったんだろう。電車で助けられた時からだったかもしれないし、昨日の巣山ん家でだったかもしれない。会う度に、考える度に、どんどん気持ちは大きくなっていたのだ。それは今まで感じてきたもの何とも酷似していなかった。

これは、恋だ。




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