「さあ行きますか」

適度に日焼け止め塗ったし(この歳になると皮膚が気になる)タオル持ったしうちわ持ったし。よし完璧だ。朝飯は栄口が用意してくれた。シーチキンの入った卵焼きと野菜炒め、あとご飯と味噌汁。勿論美味かった。俺と彼は薄味が好きで、好みが似ている。

「うん、行こう」

あまり状況を把握していなかった彼に、説明は済んである。昨夜風呂場から出てきたら栄口はテレビを点けっぱなしで、テーブルに伏せて寝ていた。むにゃむにゃ言いながら幸せそうに寝ていたけど、さすがにこの体勢は辛かろうとベッドに運び、俺はソファーで寝ようと思った。しかし運び終わった栄口が俺の服の裾を握って離さなかった。いや、下手に動かすと起きると思ったら触れられず、そのまま一緒にベッドへ入った。

「暑いから自分で服脱いでたんだろうな」
「びっくりしたよー」

あはは、と帽子のツバを触って彼は言った。楽しそうだ。

電車を乗り継ぎ、球場へ向かって歩く。歩道橋を渡っていると、人の波に俺の半歩後ろを歩いていた栄口を見失いそうになった。あ、やばいかも。栄口、と呼びながら手を取る。夏だからか、手は熱かった。はぐれないように少し強く握ったら、それと同じくらいの力で握り返してきた。これなら大丈夫そうだ。

大人の男二人が手を握っていても、この人混みなら大丈夫だろう。暑い中の人混みは決して好きとは言えないが、今だけは感謝した。




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