キン、と金属音が聞こえた。ベースを挟んで向こうにいる坊主が、丁寧に打球を処理して一塁に投げた。アウト。チェンジ。野手は次々にベンチへ向かって走り、そして坊主の頭や尻をグラブでばしばし叩いていく。

「ナイス巣山」
「栄っちゃんといい感じじゃん」
「えっ」

「いい感じじゃん」と振られた俺はつい声をあげてしまった。野球のこと、二遊間のことを言っていただろうに、俺は妙な勘違いをしてしまった。

「あ、ありがとう」
「なーに照れてんだ」

あはは、と笑うチームメイト。本気でやっていた高校時代はそりゃ楽しかったし、それなりにやっていた大学のサークルもそれなりに楽しかった。今もまた、こういう雰囲気も楽しい。野球を楽しめている瞬間がすごく幸せだった。

「あ、次俺だー」

楽しそうにキャッチボールを始める三人目の投手。投手ばっかり多くて野手はぎりぎり。まあ好きなことをやっているんだからこういうのもありだと思う。俺は二塁手が好きだし、巣山は遊撃手が好きだから俺達の二遊間が成り立っているんだろう。

「栄口」
「ん」
「ほい」
「っあ、ありがと」

冷たい飲み物を巣山から手渡される。喉渇いてたからありがたい。あ、そうだ。

「あ、これ」
「サンキュ」

俺は傍にあった巣山のタオルを渡した。ちょうど探してた、とニカッと笑われた。太陽みたいに眩しい笑顔。巣山は高校や大学でも、こんな風に笑っていたのだろうか。少年時代の彼を想い、冷たい飲み物を喉に流し入れた。
今の俺、楽しくて楽しくて仕方ないや。




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