「んー!」

よく晴れた週末。昨日天気が少しぐずっていたから心配したけど、お天気お姉さんの言葉は正解だった。いい天気。まさにキャッチボール日和。

「巣山来るまでストレッチでもしてようかな」

ジャージなんて張り切りすぎかと思ったけど、せっかく同じ元球児だったのだ。少しくらい頑張ったっていいじゃないか。
俺は地面に腰を下ろしてストレッチを始める。普段している草野球の時と同じように、丁寧に。でもなぜか試合の時よりワクワクしていた。彼はどんな風に球を捕り、投げるんだろう。フォームは?角度は?そんなことばかり考えながら彼を待った。

「ごめん、待った?」
「巣山!!おはよう」
「おはよ」
「時間五分前。俺が早く来ちゃってたんだから大丈夫だよ」
「…おう」

巣山もジャージだった。上は黒いTシャツ。梅雨も明けていよいよ七月に入った。日射しが眩しい。

「じゃあやるか」

一通りストレッチを終えた巣山は、グラブを叩いて鳴らした。俺はボールを手に取り返事をする。
初めは近くから軽く。他愛ない話をしながら徐々に距離を離していく。周りにはまだ誰もいなかった。公園に二人きり、ボールを捕る度響く皮の音。向かいには爽やかな笑顔の坊主。

「好きだなあ」

言ってからはっとした。勝手に出てしまった言葉。それは何に対して言ってしまったのか、自分でも分からなかった。
キャッチボールなのか、野球なのか…それとも。




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