「ダウン済んだら各自片付けなー」

花井の声がグラウンドに響き渡る。ダウン後独特の気だるい空気の中、振り絞るようにして返事をする。分担されている仕事とか、それぞれのポジションの整備とか、人数は少ないながらに慣れたものだ。誰一人動かないチームメイトはいなかった。やっぱりこのチームはいいな、とぼんやり思っていたら、ぽんっと肩を叩かれる。

「お疲れさん。今日ベース当番だよな」
「あ、うん!そうそう。じゃー」
「じゃーんけーんぽい」
「勝ったー!じゃあ巣山二、三塁のベース宜しく」
「また負けた」
「俺いっちるーい!」

一歩大きく跳ねて、一塁へ向かった。砂とシューズの擦れる音がして、その方を向けば巣山が走って二塁に向かっている。ベースを外し、それを片手に三塁へ向かった。それを横目に、同じように一塁のベースを持って水道へ走る。

「負けた」

担当のベースが一枚多いのだから、巣山の方が遅いのは当たり前だ。それでも巣山は悔しそうに少しだけ項垂れた。精神的には色々大人だと思うけど、こういう負けず嫌いなところとかは愛しいなって思う。自分より背が高いから、普段あまり見ることのない項を見つけて、口づけたくなる。寸前で抑えてそこを撫でた。

「洗おっか」
「おう」

蛇口をひねり、勢いよく水を出す。水が当たってベースについた土が流れていく。二人でたわしを手に取り、ごしごしと擦っていく。ピカピカだったはずのベースは、どれだけ丁寧に洗っても汚れが染み付いていて。自分達が走った分を形として残してくれてる。ふと笑みが零れた。

「どうした?」
「あっううん。なんでもない」
「変なやつ」

巣山の優しく微笑んだ顔は大好きだ。照れ臭くなって、鼻を手で拭った。

「あ、栄口」
「え?」
「土」

ついてる、と言って巣山が俺の鼻についた泥を拭った。距離が近くなる。心臓の音が大きくなって、水の音が心なしか遠退いた。見つめた視線に熱がこもる。巣山の、二人きりになった時の顔だ。

「さ」

巣山の口が言葉を紡ごうとしたその時。

「皆ー!一回集合してくれるー?」
「はい!!」

モモカンの声がそれを遮り、条件反射で返事をする。巣山と一瞬だけ目が合って、それで、耳元で「また後でな」って囁かれた。

「後でって」

囁かれた耳が熱くて、くすぐったくて。
とりあえず恥ずかしさを隠すために、皆の元へ全力で走った。


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りんごさんhappybirthday!!
ご迷惑をおかけしてますがたくさんたくさん優しいお言葉をくださったり、マネさんだったり、十一番隊だったり、色々大好きです!
こんな巣栄ですが良ければ受け取ってください!!
遅くなってすみませんでした
これからも宜しくお願いします!素敵な1年になりますように。


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