一組ってさ、何かさ、何かさ、独特な雰囲気あるよね。俺栄口と話したくて一組に行くとさ、巣山と仲良さげに話してて、何か、入りづらいっていうかさ。何かそんな感じ。皆でいたらそんなこと思わないんだけどなあ。

「あーべ」

前の休み時間に水谷の嘆きを聞いていたからか、驚いて廊下からの声にすぐ反応できなかった。一呼吸置いて席を立つ。栄口はノートを持っていた。

「これ、篠岡に借りてたやつ。次阿部読みたいって言ってたろ」
「あー、あれな。サンキュ」

言葉を返しつつ栄口の左右を見ても、あいつの姿は見えなかった。

「篠岡には言ってあるから、済んだら彼女まで」
「おー」

じゃあ頼むね。そう言って引き返そうとした栄口は、キョロキョロする俺に気付き尋ねてきた。

「どうかしたの?」
「あー…いや。何でもねー」
「そんな濁されると気になるなあ」

そう言いつつ、あまり追及してこなかった。言いたくないこととか、無理に聞いたりしない、そういう奴だ。

「…いや、巣山いないなあ、と」

濁しておいてなんだけど、別に隠すことでもなかった。はっきり聞くと栄口はキョトンと首を傾げた。

「巣山?教室にいるけど…何か用だった?」
「や、そういうわけじゃないけど…お前ら仲良いからさ」

ああ、と彼は笑った。確かに用も無い巣山が七組まで来るのは少しおかしい。女子か。

「仲は良いかもしんないけど…そんないっつも一緒ってわけじゃないし。一人じゃ駄目っていうキャラでもないだろ」
「確かにな」
「あ、栄口だ!!」
「げっ」
「水谷、お疲れー」

うるさい奴が乱入してきた。栄口の腕を取って「ゆっくりしていきなよー」なんて言いながら教室へ引っ張っていく。

「あ、俺そろそろ行かないと」
「いいじゃん!巣山いないの珍しいし」
「今来ましたが何か」
「え」

話題の坊主が現れ、栄口の腰に手を回した。

「次移動だから、悪いな水谷」

すっと、エスコートするように拐っていく。

「あ、教科書とか…ごめん巣山」
「いーよ。一回教室戻るよりこっからのが近いだろ」
「ありがと」

栄口は礼を言いながら巣山の肩に額をぐりぐりしていた。おいこら、何やってんだこいつら。

「あー、巣山ばっかずるい!俺にも俺にも」
「はいはい、行くぞ栄口」
「うんっ。またね、阿部、水谷」

飛び付いてきた水谷を華麗にかわして二人は教室を出ていった。

「…案外、ガード固いな巣山」

俺の呟きは、隣にいる水谷にさえ聞こえない小さな溜め息と一緒に出た。



***



「あーもう、カッコ悪くてごめんな」
「え?」

腕を引かれながら七組を出て、理科室に向かっていたらそんなことを言われた。
「え、カッコ悪いとこなんか一つも無いよ?」

真面目にそう答えたら、巣山は真っ赤な顔して振り向いた。

「…ばか」
「えっ!!褒めたのに」
「嫉妬して、ごめん」

水谷は油断ならないんだよな、とか何とかぶつぶつ言いながら先へ進む。嫉妬してくれたのか。そうだったのか。

胸がぎゅっとなる。

「巣山」
「ん」

振り向いた巣山の高くて綺麗な鼻に、ちょん、と唇をつけた。

「ありがと」

俺の言葉に、大好きな坊主は教科書で鼻を隠して「こちらこそ」って笑った。



END

_____
杏里様よりリクエストの「巣栄+らーぜ」でした。阿部と水谷をチョイス!!
巣栄は見るからにラブラブですからね。幸せです。

杏里様、いつもお世話になっております!
杏里様は阿部と水谷がお好き…と思って二人を絡ませてみました…私の書く水谷は格好良くならないのですがご了承ください…
リクエストありがとうございました!これからも宜しくお願い致します。


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