涙が溢れた。

「栄口?」

ほら、名前を呼ばれる度に胸がきゅーってなる。
こんなにも君が好き。

「すや、ま…」
「栄口?」

名前を呼ぶと、優しい声で名前を呼び返してくれて。
柔らかい気持ちが全身に広がった。

見ちゃいけなかった。
あんなところを、見るべきでは無かったのに。

『好きです』

裏庭の近くにあるごみ捨て場に行く途中。
裏庭の木の陰から聞こえる同じクラスの女の子の声。
気になって覗くと、そこには自分の恋人である巣山がいた。

『…有難う、好きって言って貰えて嬉しい』
『すや』
『でも俺、どうしても愛しくて仕方無い人がいるから』
『…っ』
『君の、こんなにも綺麗な気持ちに答えられなくて…御免なさい』

走り去る女の子。
その姿を見て、不意に泣きたくなった。

何で俺なんだろう。
世間に知られてはいけない男同士の恋愛。
何で巣山はこれを承諾して今を過ごしているのだろう。

「す、やま」
「ん?」
「何で、俺…なの?」

俺より凄く可愛くて素直な女の子。
そんな子より俺を選んでくれたのは嬉しい。
けど、あの子に申し訳無くなるよ。

「…好きって気持ちだけじゃ、物足りないか?」

巣山は俺を優しく抱き締めた。

「巣山は…優しい」
「ん?」
「だから、好き」

いつも、どんな時も。
君は優しい気持ちをたくさんくれるから。

「傍にいて、ほしいよ」
「うん、いるよ。ずっと」

好きって気持ちがあるから、俺達は一緒にいるんだよね。
それを恥ずかしがっちゃ、それこそあの子に申し訳無いよ。

自信を持って。
もっと自信を持って、巣山を好きでいたいな。



END



***
アンド様より「相手が告白されて不安になる巣栄」で三万打フリリク頂きました!!
切ない気持ちが少しでも伝わったら良いなあ…と思います。
有難うございました!!


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